カルティエ ジャパン社長・宮地純さん「願うのは“ウーマンズ”といわなくていい未来」

カルティエCEOの宮地純さん

未来を生きる子どもたちのために私たちが家族で取り組めるアクションがある。今回はカルティエ ジャパン プレジデント&CEOの宮地 純さんに大阪・関西万博での出展についての思いとともに、社会を変えるための「本当の力」について話を伺いました。

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「願うのは、“ウーマンズ”と
いわなくていい未来」

女の子だから、女性だから。
無意識な遠慮をなくす未来への
エクスペリエンス

白ブラウスと黒パンツを身に纏ったカルティエCEOの宮地純さん

より良い社会とは、何か。
あらためて問いかけたい

WEF(世界経済フォーラム)の2024年の発表によると、日本がジェンダー公正を達成するまで、およそ134年かかるといわれています。子どもたちが夢を叶えようとするとき、キャリアを考えるとき、家族を持つとき、親になるとき。そんな未来に想いを馳せると、自分の女性としての人生を振り返り、少しでも早い実現を望むママたちは多いのではないでしょうか。「女性を取り巻く環境は間違いなく年々よくなっていますが、ペースを加速する必要がある。2025大阪・関西万博にはその一助を担う、大切な意義があると感じています」と、カルティエ ジャパン プレジデント&CEOの宮地純さん。

カルティエは、現在開催中の大阪・関西万博に「ウーマンズ パビリオン」を内閣府、経済産業省、博覧会協会と共同出展。2020年のドバイ万博に続き2回目となる同パビリオンのテーマは“ともに生き、ともに輝く未来へ”。あらためて問いかけるのは、私たちが望む社会の在り方です。
「なぜ、カルティエが万博?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、万博とカルティエには“より良い社会への貢献”という共通するパーパスがあります。1933年にジャンヌ・トゥーサンという女性がメゾン初のクリエイティブディレクターに就任しましたが、その当時において革新的なことでした。ドバイ万博の際に製作された子どもたちのインタビュー映像に“私は女の子だけどパイロットになりたい”と夢を語る少女がいますが、可愛らしい純真無垢な発言には“女の子だから”という無意識の遠慮があります。万博を通して伝えたいのは、誰もが平等に夢を抱き、輝くことのできる社会の素晴らしさと必要性。願うのは、パビリオンの名称に“ウーマンズ”が入らなくなる未来です」。

 

万博のウーマンズ パビリオンに込めた
リユースの精神

約1700㎡にも及ぶ敷地に構えられた2フロア構成のウーマンズ パビリオン。その建築には、ドバイ万博の日本館で使用したファサードがリユースされたことが話題に。「建材のリユースは、最も多くの壁を乗り越えた取り組みでした」と宮地さんは語ります。「建築家の永山祐子さんからはドバイ万博のときにその願いはお聞きしていましたが、解体、管理、再構築などにおいての現実問題のハードルは想像以上に高く“さすがに厳しいのでは”というムードが何度となく漂いました。

ただ、廃棄せずに万博から万博へリユースすることは、SDGsの早期達成を目指す万博の使命にもつながるもの。永山さんが様々な企業に強い想いを伝え“それならばやってみましょう”と共感の輪が広がり、ひとつ、ひとつと障壁を乗り越えていき、ギリギリのところで実現。協力していただいた皆さんの仕事を超えた“もっと地球をよくしたい”という連帯感が、叶えてくれたものだと思っています」。

 

誰かと戦いたいわけではない。
求めているのは平等であるための対話

トリニティのイヤリングにパンテールのネックレスやブレスレットとグラン ドゥ カフェのリングでコーディネートしたカルティエCEOの宮地純さん

この日の宮地さんは「トリニティ」のイヤリングに、メゾンの象徴である「パンテール」のネックレスやブレスレット、「グラン ドゥ カフェ」のリングでコーディネート。

 

感覚、感情の差異に気づく
ウーマンズ パビリオンの意義

「カルティエが大阪・関西万博のウーマンズ パビリオンにおいて最後までこだわったのは、どこかの国の誰かの問題ではなく、自分事として捉えるエクスペリエンスです」と宮地さん。1階のエントランスを入って最初に広がるのは、世界的アーティストであるエズ・デヴリンさんがキュレーションを手がけた没入型の展示空間。映画監督の河瀨直美さんと共作した、女性の主人公3人をそれぞれに描いたショートフィルムを上映。来場者は入口で名前を登録、自分の名前=アイデンティティが主人公の人生に組み込まれる仕掛けによって、意識を他者から自分事へとスライド、より深くストーリーへと誘う構成に。

ちなみに主人公のひとりは、小説家の吉本ばななさん。彼女の知られざる苦悩と葛藤の人生をなぞることができます。「没入型といわれていますが4D映像などのリアルさではなく、オーディエンスひとりひとりに“あなたの物語でもある”と囁きかけるような感覚。心の琴線に触れるような演出は、舞台演出を手がけるエズさんならでは。ストーリーのどの部分に自分を重ねるか……。それは年齢や性別、自身が置かれている境遇や歩んできた過程の違いによって、それぞれ異なるのではないでしょうか。感覚、感情の差異に気づくことこそ、ウーマンズ パビリオンの最大の意義です」。

 

体験を通して家族と対話。
同じ未来を思い描いて

大阪・関西万博を家族で巡るのを楽しみにしているという宮地さん。理由は、感想を語り合うため。「パビリオンの2階にある“WA”スペースでは、ドバイ万博に引き続き、世界各国の専門家やリーダーなどによる社会課題をテーマにした講演やディスカッションが行われます。ドバイ万博のトークセッションでとても印象に残っているのが、ある登壇者の言葉。オーディエンスの半数以上が女性であることに“女性の課題を女性同士で話していてはダメ、これでは前に進めない”というようなことをキッパリとおっしゃっていて、あらためて確認したことがあります。

女性の権利の主張はときに男性と敵対するように扱われがちですが、必ずしも女性が戦いたいわけではない。フェミニズム イズ ヒューマニズム、フェミニズム イズ ユニバーサリズム。理解を早めるきっかけのひとつとしての、万博。家族や仲間と体験を共有し、ディスカッションを経て同じ想いを抱くことができたなら、子どもたちの未来にもっと明るい光が射すはずです」。

Profile

宮地純さん(みやち じゅん)
カルティエ ジャパン プレジデント&CEO

京都大学卒業後、外資系証券会社を経て、INSEAD(欧州経営大学院)でMBAを取得。2017年にリシュモン ジャパン入社、2020年より現職、小学生3人の母。

WOMEN'S PAVILION

大阪・関西万博のウーマンズ パビリオン

大阪・関西万博ではウーマンズ パビリオンを共同出展中

連日、多くの来場者で賑わう大阪・関西万博。『ウーマンズ パビリオン』は日本館のすぐ隣。2フロア構成になっており、1Fは公平な未来を築くために何が必要かを問いかける没入体験、2Fにはガーデンと“WA”スペースがあり、「大いなる地球」「ビジネスとテクノロジー」「教育と政策」「芸術と文化」「フィランソロピー」「役割とアイデンティティ」のテーマで、専門家やビジョナリーリーダー、著名なチェンジメーカーが意見を交わす“対話”の場に。2025年10月13日まで開催。【営業時間】9:00-21:00 日本館すぐ隣。※来場には大阪・関西万博入場チケットが必要です。https://womenspavilion.cartier.com/ja/

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撮影/渡辺謙太郎 ヘア・メイク/只友謙也〈Linx〉 取材・文/櫻井裕美 編集/羽城麻子
*VERY2025年6月号「宮地純さんインタビュー」より。
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