『30歳までに結婚』の呪縛から自由になれる方法って?アラサー読者が専門家に聞いてみた

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「結婚“したい”」ならいいけど「結婚“しなきゃ”」の気持ちを抱えているなら、その呪縛は自分のせい?周りからの圧?世間の声に振り回されて自分の本音を見失いかねない現代。結婚にまつわるモヤモヤに詳しい「社会学者・阪井裕一郎先生」「コラムニストジェラシーくるみさん」と、リアルに悩む読者とで、“今の結婚観”を一緒に考えてみました。

あなたはいくつ当てはまる?
呪縛を感じる瞬間ってこんなとき

【A】20代後半から誕生日を迎えるのが複雑

30歳って何かを失うカウントダウンな気がしてしまう。「年齢に縛られるのは古い」って思いながらも、Xで流れてくる「30歳過ぎたら結婚のチャンスが減る」ってポストにドキリ。30歳過ぎて独身でも幸せそうに生活している先輩たちはたくさんいるし、自立した女性に憧れもするのに、自分がそうなれるかは不安。(R・Fさん/28歳・メーカー勤務)

【B】家族や親族からの圧にびっくり

「次は〇〇ちゃんが結婚する番ね」「いいお相手はいないの?」「子ども産むなら早くしなさいね」と悪気なく言われ、結婚願望はなかったのに、30歳を目前にして突然焦る気持ちが出てきました。(M・Iさん/29歳・食品関連会社勤務)

【C】SNSでの“ご報告”を正直見たくない

26歳頃から急増する、婚約指輪/結婚式/婚姻届の写真がついた“ご報告”ポスト。知らない人の結婚報告までおすすめ欄に出てきて、自分だけ置いていかれるような気持ち。(R・Sさん/28歳・美容関連会社勤務)

【D】「みんなに憧れられる相手」を探しちゃう

とりあえずマッチングアプリで婚活中。友達が結婚した相手を思い浮かべながら、「私も年収が高くて顔がよくて背が高くて家事に積極的で…」と条件のチェックが増えていく自分にちょっと違和感…。自分自身が求めているのか、誰かのいいねが欲しいのか。なぜ30歳までに? 誰のために? そこまでして結婚したい? と考え出すと止まらないので、考え込まないようにしています…。(S・Kさん/27歳・人材関連会社勤務)

【E】キャリアを優先したいけど婚期を失う恐怖

27歳で海外駐在の打診が来たけど、結婚や出産のチャンスが遠のく不安に勝てず断ってしまいました。そこまでして結婚したいのかと自問自答していますが明確な答えは出ていません。(E・Mさん/29歳・IT関連会社勤務)

【F】他のことは自分で選ぶのに、結婚だけは“選ばれたい”

彼に結婚する気があるのかわからず、プレッシャーをかけてしまいぎくしゃく。でも私自身結婚したいというよりは、20代のうちに誰かから選ばれる自分に安心したいだけなのかもしれません。(E・Uさん/28歳・マスコミ勤務)

「30歳までに結婚」への焦り、どう解消したらいいですか?

結婚観にも歴史アリ!かつては“25歳までに結婚”という風潮だった

阪井先生(以下敬称略):結婚観にも歴史があって、結婚に対する常識も時代ごとに変化しています。今読者のみなさんの中では“30歳までに…”と考える人が多いようですが、1990年代初頭までは「クリスマスケーキ理論」と呼ばれる風潮があり、24日(歳)までは特別なものとして売れるけど25日(歳)を過ぎると売れ残るから、25歳までに結婚しなきゃ…とケーキに喩えた考えがあったくらい。そう聞くと、“現代はやっぱり晩婚化なんだな”と思ったかもしれませんが、実は「晩婚化」は昔から言われていること。戦前では20歳を超えてからの結婚ですら遅かったですし、25歳までと言われた’90年代初頭にも晩婚化は言われていました。戦前の女性の手記などを読むと「私は22歳。結婚できなかった。もう一生ひとりで生きるしかない」と書かれていたり…。だから、Aのように年齢に焦る気持ちは、昔からある風潮の延長だと思います。
ジェラシーさん(以下敬称略):「30歳までに結婚」と考えられるようになった一因に、女性の大卒・院卒が一般的になったこともありますよね。私の母の世代だと、女性は短大卒業者が多かったので、社会に出るのが18〜20歳だった。でも今は22歳以上で社会人になる人が多いから、そのぶん「25歳までに」が「30歳までに」と延びたのかな。
阪井:それはあると思います。1985年に男女雇用機会均等法が制定されたことで社会は大きく変わりましたけど、当時はまだ結婚退職が前提で、25歳で辞める・辞めさせられる世の中で、「女性が四大に行ったら結婚できない」とも言われてましたからね。状況は変わっても、Eのように社会の意識から自由になれない風潮は続いてしまっています。ジェラシーさんの『アラサー・ライフ・クライシス』を拝読しましたが、そこに「何歳までに結婚・出産」と計画を立てる女性の話がいっぱい出てきますよね。

「計画的な人が是」という風潮とSNSによって、新たな欲求が肥大化している

ジェラシー:そうですね。今は計画的な人が是である風潮だと思ってて。まるで人生ゲームのコマみたいに就職、結婚、マイホーム、出産、昇進……と埋めていって、「正解」とされるルートに合わせながら働くんですよね。悪いことではないですが、本当は「自分の稼いだお金で趣味を満喫して、仕事はそこそこでワークライフバランス重視」がよかった人が、「これで私の人生幸せなんだろうか」と他人と比べてしまうBDは周りのプレッシャーから、自分より他人の目線を気にしてしまってますよね。特に、SNSの普及で「“人から見て幸せそうな私”でいたい」という欲求も増えた。それによりCFのような“憧れられる結婚をしたい”という気持ちが出るのかと思います。気づけば人の価値観に翻弄されている。怖いですよね。
阪井:戦前から戦後しばらくの間は、結婚=家と国の繁栄のためで、早く結婚してたくさん子どもを産むのが女性の価値と捉えられていました。家族のほうが焦って見合い話を持ってきたり。また、家のための見合い結婚が多数派だったので、「恋愛結婚するなんてみっともない」と言われる時代。今思えば酷い過去です。ただ、現代のように自分で相手を選んだり、キャリア選択の幅があったり、SNSがあったりということはなかったので、現代のほうが悩みの種類は多様化しているかもしれません。

リーダーズが聞きました!
結婚への焦り、どうしたらいいですか?

右:山﨑紗菜さん(28歳・事務職)
CLASSY.のライターとしても活動。自分の結婚願望が、自分からの切実な欲求なのか世間に翻弄されているのかわからず、あれこれ悩み中。

左:髙橋英礼奈さん(26歳・メディア関係)
結婚・出産する友人が増える一方、仕事と子育てを両立しているロールモデルが身近になかなか見つからず、将来の働き方に不安を感じる。

自分の真実の想いに気づくために気持ちの分解をしてみよう

紗菜:30歳までに結婚したほうがいいのかなと漠然と考えてはいるけれど、それが本当に自分の願望なのか、周りの目を気にしているだけなのかわからなくなることがあります。相手の気持ちも大切にしたいし、お互い納得いくタイミングで結婚したい。でもそれが30歳までに叶わなかったらどうしよう…と、20代後半になってから不安になることが増えちゃって。
阪井:そもそも“なぜ30歳までに結婚したいのか”といくつかの心情が絡まっている気持ちの分解をしてみるといいですね。
ジェラシー:
そうですね。自分の気持ちを深掘りしつつ、いろんな幸せの形を持った人たちの実例も深掘りしていくといいと思います。自分にとっては何が幸せなのか、どんな人生を歩みたいのか気づきやすくなります。一般的ではない夫婦形態の人、シングルでも楽しそうな人とか、いろんな事例を集めてみてください。
紗菜:私この2年くらいで気持ちの分解はするようになったんですけど、「私の何がいけないんだろう…」と悪いところ探しの分解をしちゃってました。
ジェラシー:
「彼がプロポーズしてくれないのはなぜ?」とか、他人が主体の分解になると辛くなっちゃう。「なんで今結婚したほうがいいのかな」「私にはどんな武器があるかな」「結婚しなかったら私はどういう生き方ができるかな」と、自分を主体にしてポジティブに考えてみてください!
紗菜:まわりが結婚し始めて、自分がまだ交際段階なのが恥ずかしく思えることがあるんです。たとえば、デートの写真をSNSにアップするのってもう幼いのかなとか、誰かの結婚報告のポストに比べたら軽く見えるのかなとか。結婚がすべてじゃないとわかってるけど、次のステージに進まなきゃと焦ってしまうんですよね。
阪井:「結婚してないといけない」という強迫観念から解放されることができればよいのでしょうね。結婚関連の意識調査や世界の結婚観を見てみるのもいいと思います。結婚しても幸せじゃない人はたくさんいるし、女性は結婚したほうが幸福度が下がるという研究結果もある。日本だけで生きていると結婚という形をとらないと困ることがたくさんあると思われがちだけど、世界を見れば家族の形もいまやさまざま。結婚と子どもを持つことがイコールではないし、ヨーロッパ圏では子どもの過半数が未婚者から生まれる国も多くあります。さらに日本の結婚観も移ろいます。極端な話、明治以前は離婚・再婚が当たり前。「結婚は一生に一度」のものではなかった。これだけ変化すると知れば、将来、日本もヨーロッパのように人の戸籍のあり方を気にしない結婚観になっている可能性も想像できます。今多くの人が他人の目を気にしてますけど、これも日本特有だと思えば少し気が楽になるかもしれませんね。

キャリアと結婚の両立は難しい?「30歳までに」と節目も気にしちゃう

英礼奈:キャリアを重ねていく中で結婚や出産について考えることが増えました。仕事と家庭、どちらも大切にしたいけど、それを叶えるには簡単でない現実もあると感じます。特に管理職のロールモデルが独身の女性ばかりだと「この道を進むなら家庭を持つことは難しいのかな」と自分の将来に迷いが生じてしまって。どうしても結婚したいわけじゃないけれど、しなければしないで周囲の目も気になるし、「30歳までに」と無意識に焦る気持ちもあって、何を優先すべきか正直すごく悩んでいます。
ジェラシー:私が新入社員の頃、10歳くらい上の先輩に「昔の女性は、仕事か家庭か片方に専念していればよかったけど、今は仕事・結婚・子どもと三拍子そろってる人が目立つから大変よね」と言われて、胸にズシンときたのを覚えています。そういう価値観をインストールしてしまうと、私も3つ全部手に入れて攻略したい!とスタンプラリーみたいな感覚に陥ってしまう…。現代は特に、その欲求が肥大化している気がします。
阪井:出世して理解のあるパートナーがいて可愛い子供もいて…と「よりよい結婚」を求めるせいで、結婚への道がハードになっていますよね。とはいえ、3つすべて望む人には手の届く社会であるべきだと思うんですけれど。
ジェラシー:そうですよね。でも実際には1つあるだけでいいし、3つ手に入れるにしてもアラサーのうちに揃えなくたっていい。ロールモデルがいなくても自分で道を切り開けばいいんです。
英礼奈:確かに、いつ何に集中するかは人それぞれでいいですよね。結婚後に将来の可能性の一つとして卵子凍結を選んだ知人もいるので、今の時代はいろんな道があるなと感じています。
ジェラシー:そうですね。仲間の事例を自分の心にストックし続けてみてください。友達だけじゃなくて、知り合いの知り合いとか、いろんな人を。うるさいおじさんおばさんが何か言ってるなと思うこともあるかもしれないけど(笑)、私の同世代にはこんな仲間がいるんだ、と広い視野と選択肢を持っておくと、自分なりの悩みの解決策も見つかると思いますよ。
阪井:それと、結婚の歴史や海外の現状を知識として入れておくのも呪縛から逃れる手段として勧めたいです。社会を俯瞰して見る目ができると、いろんな場面で助けになりますよ
英礼奈:心の健康を保つためにもなりそうですね。身近な圧に負けなくてもいいんだなと、お二人のお話に背中を押していただけました。

いろんな観点から考えられるように知識を蓄えておくと役に立つ。事例収集は「エンタメ」からでもOK!

阪井:普段の生活の中だと身近な常識に囚われがちですが、いろんな観点で見たら“こんな呪縛に囚われる必要はなかった”“今当たり前だと思われてることって実はいい加減でしょうもない”と気づけて、楽になれるんじゃないかと(笑)。
ジェラシー:改めて、「結婚」の二文字に踊らされてるなってハッとしますよね
阪井:そうですね。ただ世間の風潮や他人の言説に惑わされないように…と言うのは簡単なんですけど、個人の努力で頑張れという話で終わらない社会にしていきたいですよね。現代は正解がひとつしかないと考えられがちだし、エラーを許さない傾向。でもみんなが「いろんな形があってもいい」と考えられれば、呪縛からも逃れられるはず。自分や人を許すような気持ちで社会を考えていけると、自分にとってもいい未来選択をしていけるのかなと思います。あとは、悩みに関連するエンタメに触れるのも手軽でおすすめです(下枠参照)。何らかの形で知識を蓄えてみてください。きっとみなさんを救ってくれると思います。

今日の対談で、気持ちが楽になった!

「事例のストックを増やす活動が大事という話がすごく共感できて、これからはひとりで思い悩まず、たくさんの人の話を聞き続けたいと思いました。社会学的観点から考えてみるという発想はなかったので、阪井先生の『結婚の社会学』も絶対に読んでみます!」From ERENA

「毎日SNSを見て、他人の生活を目にする機会が当たり前にあるので、自分の見られ方も気にしてたんだなって改めて思いました。ダメな自己分析をして自己嫌悪に陥ることも多かったのですが、もっとプラス思考に考え、自分の幸せを追求してみたいと思います。」From SANA

教えてくれたのは…