あらゆる魅力を備えたブラジルからの新世代ダンサー【王子様の推しドコロ】
vol.22 ダヴィ・ラモスさん

PROFILE
Davi Ramos/2000年生まれ、ブラジル・リオデジャネイロ出身。身長190㎝。12歳の時に、ブラジルの伝統格闘技カポエイラの先生のすすめでバレエ教室に通うことに。その後、リオデジャネイロのLyceu Escola de Dançaで、ロレーナ・ボアベンチュラ氏に師事しさらにバレエを学ぶ。2016年、ローザンヌ国際バレエコンクールで準決勝に進出し奨学金を獲得、英国ロイヤル・バレエ学校に入学。2019年の卒業後、オランダ国立バレエ団に入団。2023年のスジェ昇格後、オーストラリア・バレエ団の芸術監督で世界的に有名なバレエダンサー、デビッド・ホールドバーグ氏のオファーを受け、2024年、ソリストとして同団に入団。その年末にファースト・ソリストに昇格。バレエ界の未来を担う若手ダンサーとして注目を集めている。
公式Instagram @dav1ramos

サンバの国が生んだ新しいスター
ブラジルといえば、軽快なリズムに乗ってダンサーが天性の抜群の音感で踊る「サンバ」のイメージが強いと思いますが、実はバレエ界にはブラジル出身のスターが多くいます。シュツットガルト・バレエ団の全盛期を築き上げたマルシア・ハイデ、アメリカン・バレエシアターで大活躍したマルセロ・ゴメス、英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、マヤラ・マグリ、ベルリン国立バレエ団のプリンシパル、ダヴィッド・ソアレス、マリインスキー・バレエ団初の南米出身ダンサーとして注目を集め現在フリーで活躍するヴィクター・カイシェタ……。共通するのは、身体能力に著しく優れ、その美しいヴィジュアルで人気を集めていること。中でも、若手注目株として話題を集めるのが、先日、所属バレエ団の来日公演で華々しく日本デビューも果たしたオーストラリア・バレエ団で活躍するダヴィ・ラモスさんです。
恵まれた体格と輝かしい経歴
5月下旬、大成功をおさめたオーストラリア・バレエ団の来日公演。演目は『ドン・キホーテ』。スペインを舞台に繰り広げられる陽気で情熱的な本作は、ダンサーたちの超絶技巧が魅力な華のある古典バレエ。男性ダンサーの主要な役柄のひとつ「エスパーダ」は、色気と麗しさで魅了するいわゆる“イケメン”な役どころ。エスパーダの色男ぶりが作品の盛り上がりを左右する大事なポイントですが、本公演ではダヴィ・ラモスさんがエスパーダ役を好演。誰よりも長く美しい手脚が目を引く、15頭身はありそうな類まれなる肉体美と、力強く魅惑的な踊りで日本のバレエファンを驚かせ魅了しました。

「バレエを始めたのは12歳。当時から背が高く手脚が長かったので、知人にすすめられ、母がバレエ教室に連れていってくれました。初めてのレッスンではとても好奇心をそそられましたが、同時にこれまでバレエを見たことがなかったので怖さがあったのも覚えています。とても才能に溢れ、初心者にしては大きな可能性を秘めていると先生は言ってくれました」
リオデジャネイロのバレエ学校で3年間学んでいたダヴィ・ラモスさんが、その後、注目を集めたのは、第44回ローザンヌ国際バレエコンクール。準決勝に進み、全額奨学金を獲得。英国ロイヤル・バレエ学校に留学します。
「英国ロイヤル・バレエ学校でさらに3年間学び、最終学年では『パキータ』の主演を踊りました! 卒業後は、アムステルダムにあるオランダ国立バレエ団に所属し、『眠れる森の美女』『ジゼル』『白鳥の湖』『ライモンダ』など、主要な古典演目で主役を踊るという素晴らしい経験をしてきました。現在は、オーストラリア・バレエ団に移籍し、1年半の間に『エチュード』『くるみ割り人形』の王子や『マノン』のデ・グリューを踊ることができ、私はこれまでのバレエ人生の中で、様々な素晴らしい転機に恵まれすべてのことに感謝をしているんです! 」
ワイルドかつエレガント。その踊りに秘められた力強さ
バレエダンサーはスタイルに恵まれた人が多いものですが、その中でもダヴィ・ラモスさんの抜群の身体バランスは観た人が衝撃を覚えるほど。舞台を掌握する天性の華、存在感がありながらも大味ではなく優雅でエレガント、そして情熱的な踊りは、観る者の心を鷲掴みにします。
「私がもっとも好きなダンサーはルドルフ・ヌレエフ氏です。バレエという芸術への献身、そして卓越した技術と芸術性に深く感銘を受け、心から彼を尊敬しています。彼から多くのインスピレーションを受けていますが、いつかは私も踊りで人々にインスピレーションを与えられる存在になりたいと思っています。舞台の上では自由でありたいし、何よりも”自分自身”でいたいんです。それこそが、私の最大の強みだと思うから。踊りだけは唯一、私が完全にコントロールできるもので、だからこそ常に新しい表現を探し続けています。自分らしくあるための方法を、いつも模索しているのです」

ルックスはワイルドですが、古典クラシックでは、しなやかでどこまでもエレガント。品格高くノーブルに役を生きるところも魅力的。得意な踊りのテイストを聞くと――
「私は踊ること全般が大好きですが、特に心から楽しんでいるのは純粋なクラシックバレエです。本当に美しく、力強いものだと感じています。私はさまざまな形で“強さ”を持っていて、それこそが自分らしさを形づくっているもの。そのすべてを言葉で説明することはできませんが、観客のみなさん自身にそれを感じ取ってもらいたいです」
どこまでも謙虚ながら、踊りへの情熱が溢れるダヴィ・ラモスさん。オーストラリア・バレエ団来日公演に続き、この夏も来日しガラ公演にも出演する。
「日本に再び行けること、そして日本のみなさんの前で踊れることに、言葉にできないほどワクワクしています! 日本の観客のみなさんは本当に温かく迎えてくださり、バレエへの愛と喜びに溢れていて、そのことを思うだけで自然と笑顔になります。そんなみなさんの前で踊れることに、心から感謝しています。今回は、奥村彩さんと一緒に『くるみ割り人形』のグラン・パ・ド・ドゥと『ジゼル』第2幕を踊ります。彩さんは素晴らしいバレリーナで、一緒に踊るのが今から本当に楽しみです。この新しいパートナーシップが始まるのが待ちきれません。みなさんにお会いできるのを楽しみにしています!!!」

ダヴィ・ラモスさんの姿が見られるのは……『Bright Step 2025』(2025年7月29日、30日)
バレエを通じて「夢や希望を届けたい」「目標に向き原動力なりたい」「若いからこそバレエをもっと身近に感じて欲しい」そんな想いをコンセプトに、毎年夏に開催されるガラ公演『Bright Step』。国内外で活躍する一流のダンサー、将来が期待される人気急上昇中のダンサーなど、この公演でしか見られないダンサーたちが出演します。公演は3部に分かれており、古典演目からコンテンポラリーまで見ごたえのある構成に。2025年7月29日18:00~(予定)、30日17:00~(予定)、ともに新国立劇場中劇場。詳しくは、公式HP(https://www.brightstep.jp/performance)をご確認ください。
取材・文/味澤彩子