【JJドラマ部】2025年上半期 もう一度観なおしたいドラマベスト5

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『ホットスポット』(日本テレビ)公式ホームページより

8月に入り、2025年の夏ドラマもいよいよ佳境。話題作が続々と盛り上がりを見せる中、ここでふと立ち止まって、今年の前半戦を振り返ってみたくなりませんか? というわけで今回は、ドラマを語らせたら止まらないコラムニスト小林久乃と元JJ編集長イマイズミの二人が、それぞれの視点で選んだ「2025年上半期ベストドラマ5本」をお届けします。

【コラムニスト小林久乃のベスト5】
①『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)
②『阿修羅のごとく』(Netflix)
③『ホットスポット』(日本テレビ系)
④『それでも俺は、妻としたい』(テレビ大阪/BSテレ東)
⑤『ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~』(テレ東系)

【元JJ編集長のイマイズミのベスト5】
①『ホットスポット』
②『続・続・最後から二番目の恋』
③『東京サラダボウル』(NHK総合)
④『それでも俺は、妻としたい』
⑤『御上先生』(TBS系)

地方都市が舞台の大人のラブストーリーとエイリアン・ヒューマン・コメディーが1位!

元JJ編集長イマイズミ(以下、イマ):最近、年のせいか記憶が怪しくて…。半年前に観たドラマすら、ちゃんと思い出せないんですよね。だから今回みたいに、半年ごとに振り返る企画は本当にありがたいです。

コラムニスト小林久乃(以下、小林):じゃあ、忘れちゃう前に早速、私の1位から発表しちゃっていいですか?(笑)。

イマ:小林さんの1位、どうせ『続・続・最後から二番目の恋』でしょ?

小林:もちろん! イマイズミさんも2位に入れてたじゃないですか。

イマ:いや〜あの作品、50代の仕事や老いとの向き合い方がリアルすぎて…ぐっときました。でもテーマのわりに重たくならず、前向きになれる作りがまた絶妙で。

小林:ハマったのって、私たちの世代だけじゃないんですよ。20〜30代の若い子たちもFODで過去シリーズをイッキ見してるっていう声、けっこう聞きました。

イマ:えっ、あの世界観が若い世代にも刺さるんですね?

小林:千明(小泉今日子)に対する憧れを持っている子、意外と多いんですよ。部下の話はちゃんと聞くし、年を重ねても自然体で、ポケットマネーでサクッとおごってくれる。ホント、カッコいいですよね。

イマ:わかる…、私もああいう人間になりたかった…。

小林:まだ間に合いますって(笑)。私もシーズン1の頃からずっと千明が自分のロールモデルでした。そして13年経って還暦が近くなっても、ちゃんとヒロインをやれている小泉今日子って本当にすごい。和平(中井貴一)との掛け合いも、シーズンを追うごとに落ち着きが出てきて、それがまたリアルなんですよね。

イマ:印象に残ってるシーンって、どこですか?

小林:えええ、 それは選べない! 自分のSNSで「今回は号泣した」って何回書いたことか…。

イマ:私は第8話。啓子(森口博子)が「定年になったら辞めようと思ってる」って話すシーンですね。「頑張って会社に残っても、自分の居場所がない」っていう言葉に胸がギュッとなって…。

小林:イマイズミさん、啓子と同じ出版社勤務だから余計に響きますよね。私は、万里子(内田有紀)が心の変化に戸惑ってるときに千明が言った、「いっぱい悩んで成長して、いつか心の成人式を迎える。その時は一緒にお祝いしよう」ってシーンが印象的でした。…あ、でも最終回で和平が「起きたときにすっぴんのあなたがいる暮らしがしてみたい」って再プロポーズする場面も良かった! いや、それから——。

イマ:ちょっと待って、キリがないって!

小林:ですよね(笑)。でも、あの奇跡的なキャスト・スタッフ陣が誰ひとり脱落せず続いてるのって、やっぱりすごい。私は『続・続・続・最後から二番目の恋』の実現を切実に願ってます。えりな(白本彩奈)の結婚まで、ぜひ見届けさせてほしい…!

イマ:あのメンバーなら不祥事の心配もなさそうだし、期待して待ちましょう!

小林:そして、イマイズミさんの1位は『ホットスポット』でしたね。私も3位にランクインさせました。

イマ:やっぱりこのドラマも外せないですよね。放送は今年の1月期だったのに、もうずいぶん前のことみたいに感じるのはなぜでしょう…。1位に選んだのにはいくつか理由があって、まず何といっても、バカリズム脚本の会話劇がますます冴えわたっていたこと!

小林:あの、きーちゃん(遠藤清美/市川実日子)、みなぷー(日比野美波/平岩紙)、はっち(中村葉月/鈴木杏)の仲良し3人組の女子トークですね。喫茶店やファミレス、軽自動車の中で延々と繰り広げられるあの感じ、最高でした。

イマ:ホント、他愛のないおしゃべりなのに、なぜかずっと聞いていられる。不思議ですよね。あれはもう、バカリの心の中に“女子”がいないと書けないリアルさです。

小林:あと忘れちゃいけないのが、宇宙人・高橋を演じた東京03の角田晃広! 第3話で、こっそりホテルの大浴場に忍び込んだ後、ずぶ濡れになってガクガク震える姿…あれは神回でした。お腹よじれるかと思った(笑)。

イマ:基本は小物でセコいんだけど、根は優しくて、時折見せるちょっとカッコいい一面がたまらない。ああいうキャラって、コントで鍛えた演技力がないと絶対に成立しないと思います。

小林:全体的にはすごくスケールの小さい話なのに、菊地凛子(梅本雅子役)、山本耕史(古田役)、安藤サクラ(高橋弘子役)とか、豪華キャストがちょこちょこ顔を出すのも面白かったですよね。

イマ:そうそう、「この人、絶対キーパーソンでしょ!」って思わせといて、案外関係なかったり。そういった“ハズし”のセンスが絶妙。細かい伏線も多くて、何度でも観たくなる作品でした。

小林:結局、“何度も観たくなるかどうか”って、ベストに入るかどうかの基準ですよね。私も『続・続・最後から二番目の恋』を毎週2回以上観てたし。

イマ:そういった意味でも『ホットスポット』は上半期の本命のひとつでしたね。

向田邦子の傑作ドラマのリメイクがランクイン

イマ:小林さんの2位は、地上波じゃなくてNetflixオリジナルドラマの『阿修羅のごとく』。原作・脚本は向田邦子で、これまでテレビや映画で何度も映像化されてきた名作ですね。

小林:もう私、向田邦子が大好きすぎて…。お金に余裕があったら、彼女が住んでた南青山第一マンションズに住みたいくらい!

イマ:えーと…(PCをカチャカチャ)、購入で3〜4億円、賃貸でも月50〜60万って出てますけど…。頑張って稼いでください(笑)。

小林:ですよねー。で、今回の『阿修羅のごとく』は、父親の浮気疑惑をきっかけに集まった四姉妹の物語。冷静な長女・綱子(宮沢りえ)、おっとりした次女・巻子(尾野真千子)、しっかり者の三女・滝子(蒼井優)、そして自由奔放な四女・咲子(広瀬すず)。それぞれが家庭や夫婦関係に問題を抱えながらも、父の問題を通して家族や自分自身と向き合っていくというストーリー。

イマ:過去のドラマ版や映画版と比べても、今回の四姉妹はかなり豪華ですよね。全員が主役級!

小林:中でも、広瀬すずの演技に惹きつけられました。ボクサーの夫がチャンピオンになって調子に乗りはじめたと思ったら、試合後に彼は意識不明に。そのあと彼女は偶然出会った男性と…っていう、かなり自由奔放な役なんですけど、リアリティがあって良かった!

イマ:彼女がそういう役をやるの、ちょっと意外かも。でも観たくなりますね。

小林:全体的に、人間の欲望とか泥臭い部分がしっかり描かれていて。そして、男はみんなダメンズ(笑)。浮気してるし、頼りないし。でもその分、女たちがすごく強くて魅力的でした。あと、やたらご飯が美味しそうだったんですよ。調べてみたらフードスタイリストが飯島奈美さんで、「やっぱりな!」って思いました。

イマ:食欲と性欲が全面に出てくる作品ですね、これ(笑)。

小林:まさに! でも、そういう欲望がちゃんと肯定されていて、豊かだった昭和の空気を感じるんですよね。イマイズミさんも観ておいて損はないと思いますよ。

外国人問題を扱った社会派ドラマとセックスレス夫婦が主役のホームドラマをセレクト

イマ:私の3位は『東京サラダボウル』です。

小林:あ、これは絶対イマイズミさんが選ぶと思ってました! 私のまわりでも、特に男性がよく観ていたイメージ。

イマ:つい先日行われた参議院選挙で、「日本人ファースト」を掲げた政党が躍進しましたが、そんな時代の空気を先読みして、外国人に対する偏見や無意識の差別に真正面から切り込んだという意味で、すごく意義のある作品だったと思うんです。こういうテーマに挑めるのは、やっぱりNHKならではですね。

小林:日本人vs外国人、どっちかが絶対悪!みたいな単純な描き方じゃなくて、それぞれの背景や事情が丁寧に描かれていたのもよかったですよね。あと、外国人キャストがワイドショーの再現ドラマに出てくるような感じじゃなくて、本国でちゃんと活躍してる俳優を使っていたから、完成度もすごく高かった。

イマ:物語を引っ張る鴻田麻里(奈緒)と有木野了(松田龍平)のバディ感も絶妙でしたよね。見た目も性格もまるで正反対なんだけど、それぞれの持ち味がうまく嚙み合っていて。

小林:私、男性に変なあだ名つける女性キャラってちょっと苦手なんですけど、このドラマは不思議と気にならなかったな。

イマ:変なところにこだわりますね(笑)。たしかに「アリキーノ」って呼び方、最初はちょっと引っかかったけど。有木野がなぜ警察を辞めたのか、という別軸のストーリーもあって、それが少しずつ明かされていく構成も見事でした。ラストに向けての盛り上げ方も秀逸!

小林:そして、私とイマイズミさんが4位で一致したのが、『それでも俺は、妻としたい』。BSテレ東で放送されてたんですけど…誰も観てなかった(笑)。

イマ:ちょうど今放送中の『こんばんは、朝山家です。』(朝日放送/テレビ朝日系)は、『それでも俺は』と同じく、原作・脚本・演出が足立紳さんなんですよね。どちらも、がっつり自分と家族がモデル。

小林:『朝山家』では、主人公の朝山健太(小澤征悦)はすでに朝ドラ脚本家として成功してますけど、『それでも俺は』の柳田豪太(風間俊介)は、まだ全然売れてない。

イマ: それなのに、仕事に文句つけたりサボったりで、妻のチカ(MEGUMI)にボロカス言われる(笑)。観てるこっちも毎回イライラするんだけど、それが風間くんのすごさ!

小林:あの情けなさ全開の表情とか卑屈な態度とか、もう見事すぎて逆に感心しちゃう。MEGUMIのヤンキー感もバッチリはまってたし。

イマ:息子役の嶋田鉄太くんもよかったですよね。「この子、演技じゃなくて本物なんじゃ?」って錯覚するくらい自然体。両作品に共通して出ているのは彼だけです。

小林:しかもあの家のシーン、足立さんの実際の自宅で撮ってたって知ってびっくり! そりゃリアルなわけですよ。昔はドラマに対して憧れの気持ちを持って観てたけど、今は「これ、うちの話じゃん!」っていう解像度の高さが刺さる時代なのかも。

イマ: 『ホットスポット』の女子トークとかもそうでしたけど、最近のエンタメって、共感こそが最強のフックになってますよね。

元祖トレンディー俳優が怪演したドラマと新感覚の学園ドラマに注目!

小林:あれ? イマイズミさん、『ディアマイベイビー』が入ってないじゃないですか!

イマ: ギリギリ6位だったんですけど、印象に残った作品としては間違いなく今年一番でした。

小林:あのドラマは、何といっても松下由樹(吉川恵子役)の怪演に尽きますよね。

イマ: ハイライトは、やっぱり森山拓人(野村康太)とのあのディープキス…って、またこの話になっちゃう(笑)。

小林:他にもいろいろあったホラー展開のバリエーションもすごかった。脚本の岸本鮎佳さん、舞台を中心に活躍している方なんですが、綾瀬はるか主演の『ひとりでしにたい』(2025年/NHK総合)では演者としても出演していて、多才だなぁと。

イマ:彼女が脚本を担当した『夫の家庭を壊すまで』(2024年/テレ東系)も面白かった。

小林:そして、エンディングテーマ『マリア』(阿部真央)の入れ方が絶妙でしたよね。あの「Oh マ〜リア〜♪」が流れるとジワジワくる。

イマ:私が5位に選んだ『御上先生』の主題歌『Puppets Can’t Control You』(ONE OK ROCK)も、インパクト抜群でした。でも、カラオケで歌おうと思ったら、冒頭以外は全部英語で、即断念しましたけど(笑)。

小林:『御上先生』の脚本は、岸本さんと同じく演劇畑の詩森ろばさん。王道の学園モノとは一線を画す展開が新鮮でした。

イマ:主人公の御上先生(松坂桃李)が出しゃばらないことで、生徒たちの個性がしっかり立っていたのもよかった。実はこのクラス、今後の朝ドラヒロインが2人もいるんですよ。

小林『ばけばけ』(2025年後期)の髙石あかり(千木良遥役)と、『風、薫る』(2026年前期)の上坂樹里(東雲温役)ですよね。しかも、最近やってた『あおぞらビール』(NHK総合)で主演を務めた窪塚愛流(森川行男役)までいるという。

イマ:3年2組の生徒、NHKにめちゃくちゃ愛されてますね(笑)。全体的にシリアスなムードが多かったんですが、学年主任・溝端を演じた迫田孝也が出てくると、空気がちょっとだけ和む。『ホットスポット』の角田同様、器の小さい男をやらせたら天下一品でした!

小林:イマイズミさんって“迫田推し”ですよね。

イマ:はい、日曜劇場と同じくらい迫田さんを愛してます! 来年は『VIVANT』(TBS系)の続編がありますが、もう山本巧(迫田)は排除されちゃったから出ないんだろうな…。

小林:たぶん他の日曜劇場に出るから元気出して!

小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp

元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。

イラスト/lala nitta