日常を離れなければ見えない「答え」がある。“旅の達人”が語る、迷いの乗り越え方
迷いの度に旅へ出て、旅の度に自分の本心が姿を現す。見知らぬ国で出会った人、景色、そして自分自身。それらが少しずつ運命の歯車を動かし、気づけば人生は大きく方向を変えていく。そんな〝人生の大きな転機〟となった旅の物語に触れました。
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「この国に生まれなくて良かった」13歳の私に父が返した言葉——「世界の幸せを知る」旅に出るきっかけに
山川 咲さん 42歳・東京都在住
企業家・CRAZY WEDDING創業者
〝旅は人生の装置〟。
自分の迷いに気づき
そっと背中を押してくれるんです
自分の迷いに気づき
そっと背中を押してくれるんです
「旅は自分の本心に気づき、人生の選択を自然に後押ししてくれる装置なんです」。そう語る山川さんの人生は、旅なくしては語れません。20代の会社員時代は「生涯この会社で働いていくんだ」という気持ちで寝る間も惜しんで働くほど、キャリアアップを目指していました。しかし27歳のときに流産を経験したことから、命の尊さを考えるように。そのことがきっかけで一度人生にストップをかけ、働き詰めだった仕事を辞めることになります。
当時はかなり落ち込み「このままではダメだ」とエスケープするように日本を出たのが最初の旅、行き先はオーストラリアでした。現地の陽気な人々と過ごすなかで、自分の悩みや拘りの小ささに気づき、徐々に落ち込んでいた気持ちが前向きに。そして、旅の終盤で訪れたエアーズロックの大自然の光景に、経験したことのないほどの強いパワーを感じ「今の私は何にでもなれる! 自分の人生は何か起きるんだ!」と大変感銘を受けます。
その後パワーを蓄えたまま日本へ帰国。「結婚式は仲間に囲まれ、自分の人生を肯定できる機会。当時はやりたいことができる式場が少なく、この業界を変えたい!」との自身の経験から想いが芽生え、CRAZY WEDDINGの創業へと繫がります。飛ぶ鳥を落とす勢いで一躍人気ブランドとなり、業績も右肩上がり。「仲間と無我夢中でやりたいことをする日々が楽しくて仕方がなかった」。
ところが、業界内では若い企業だったため、斬新なアプローチが世間の目を引き、創業から4年目、人気もストレスも絶頂を迎えたことで、会社に行けなくなるほど精神的に落ち込むことが増えてしまいました。そのタイミングで「今の状況を変えるためにも1回離れなければ」と、2度目は船旅へ。時間に追われることなく、自然に沿った生活をするなかで、働き方を見つめ直し「自分を傷つけてまで働くのはやめよう!」と決断し帰国。しばらくして絶好のタイミングで子どもを授かり、無事出産をすることができ一児の母に。そのことで私生活も充実し、やりたかった仕事もうまく休息を取りながら続け、順風満帆な日々を送っていました。
しかし、ふと「この先10年、20年と会社が続いたとしても大きな変化はないし、自分自身の成長はこれ以上望めないんじゃないか」と考え始めたのが創業して8年目のこと。「悩み始めたらすぐ旅へ」をモットーに、3度目の旅はスリランカを選択。アーユルヴェーダと向き合うなかで「自分でつくった会社だけど、もう辞めてもいいかも」と思い始め、旅を終える頃には「会社を辞めた先の未来にワクワクしてる自分がいる」と気づき、創業した会社を卒業する決断に至りました。そしてまずは娘と向き合う時間をとろうと、奄美大島に3カ月程、暮らすように滞在。ゆったりとした時間のなか、娘と四六時中過ごせました。
私生活では18年連れ添った元夫との離婚。今の夫と出会います。再婚を決断する前には「この人とずっと一緒にいられるのか」と、2人でヨーロッパの旅へ。たくさん喧嘩をしてすれ違ったこともあったのですが、「旅がなければ再婚も決断できなかったかもしれない」と、この旅をきっかけに結婚を決意できたといいます。
「振り返ると、日常を断ち切ったオーストラリアへの一人旅から私の人生は始まりました。その後も繰り返し旅をしましたが、自分の選択や人生を素直に受け入れられるようになったのも、そのおかげ。私の人生に旅は必要不可欠です」。
動きやすい格好にバックパックが旅スタイル。「1年後の未来に驚き続ける自分でいたい」。その生き方に旅が寄り添います。
<編集後記>旅を糧に人生を切り拓く、真の強い挑戦者
10年前からお会いしたかった山川さん、念願の取材でした! バックパック姿で待ち合わせ場所に山川さんが現れた瞬間、吸い込まれる程のパワーを感じ、幸福感にも満たされました。「悩むなら旅へ行こう。いつからでもどこからでも始められる」。その考えが生き方にも反映されていてさすがです! クシャッと笑う笑顔も可愛かったー!(ライター 小出真梨子)
撮影/西 あかり 取材/小出真梨子 ※情報は2026年2月号掲載時のものです。
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