俳優・ 田中麗奈さん 推しの”ちゃんみな”に共感「弱さも葛藤も、表現者の武器になる」
凛とした佇まいに、しなやかな美しさが宿る田中麗奈さん。芝居へのひたむきな情熱を原動力に、俳優として確かな存在感を放つ田中さんへ、仕事観や母としての想い、そして今見つめる“幸せのかたち”を伺いました。
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普通の主婦が、「自分らしく生きること」を追い求める泥棒に!?
今回、映画『黄金泥棒』で久しぶりに単独主演を務め、ワクワクしながら撮影に臨みました。一方で主演はただ演じるだけではなく、スタッフさんや共演者の方が楽しめているか、お客さんが足を運んでくれるかどうかも意識するので、プレッシャーも大きかったですね。
私が演じた藤根美香子という主人公は、平凡に生きていた普通の主婦。たまたま出合った”金のおりん”を盗んでしまうところから日常が一変し、夫の浮気をきっかけに泥棒へと豹変していくユニークな物語です。
泥棒映画でありながら、この作品の根底にあるテーマは、一貫して”自分らしく生きること”。子どもの頃は誰しも、「すごいと言われたい」とか、小さな野心を抱いていますよね。でも大人になるといつの間にか、世間の価値観や常識に飲み込まれてしまう。主人公の美香子も、親の言うとおりに進学して結婚して、”絵に描いたような普通の人生”を歩んできた女性です。
”普通であること”は幸せかもしれません。けれど本人が納得していなければ、その日常はいつしか苦痛に変わってしまう。自分が本当に求めていたのは、手に入れたいものを見定め、計画し、行動する……そのプロセスそのものだったのだと気付いた美香子は、次第に窃盗にのめり込んでいくんです。
泥棒は犯罪ですが、”普通の人生”にコンプレックスを抱いたり、日常に物足りなさを感じている人は少なくないはず。美香子の心境に、共感できるところもあるんじゃないかなと思います。
主人公の想いに重なった、自分らしく生きられない葛藤
私は5歳の頃からずっと女優になりたくて、その夢が叶わなかったら、生きる意味を見失っていたかも。そうなれば、美香子のように突拍子もない行動に出ていてもおかしくない……そんなことをふと考えたりしました。
長女を出産したのはちょうどコロナ禍。産後すぐにはお芝居に復帰できなかったこともあり、仕事がどんどん遠のいていく気がして怖かった。出産を機に、世の中から取り残されていくような感覚。自分の人生を生きられない閉塞感は、泥棒になる前の美香子の心情とオーバーラップしました。
「日常を変えたい」と追い詰められた末に犯罪へ走ってしまう弱さも、人間としてのリアル。現実から逃げない勇気があれば、美香子の人生も違っていたかもしれません。
40代も攻めの姿勢で、アグレッシブな役に挑みたい
美香子は幼い頃から、「自分にしかできないことをやりたい」という願望を抱いていました。その気持ちは、私自身にも重なる部分があって。
海外作品もそうですが、アクションやパニックムービーのような、体を張る作品にも参加したいと思っています。まだ40代で元気だし、動けるので体も最大限に使いたい。
撮影の合間には筋トレをしたり、体づくりも日課に。メンタル面も含めて、心身を整えていくことが大切だと思います。
年齢的にも母親役を演じることが増えてきましたが、それだけにとどまらず、アグレッシブで難しい役にもトライしたい。やりたいことが多すぎますね(笑)。
ちゃんみなに共感が止まらない!弱さも痛みも、芝居という表現に変えて
最近の”推し”は、アーティストのちゃんみなさんとHANAさん。年末にNHK紅白歌合戦でパフォーマンスを観た瞬間、その圧倒的な存在感と、愛にあふれた空気感に釘付けになりました。そこからHANAさんのオーディション番組『No No Girls』を一気見して、見事に沼落ち(笑)。圧巻の歌声とパワフルなダンスに、いつも元気をもらっています。
ちゃんみなさんはまだ20代という若さで、音楽性やパフォーマンスもさることながら、人の才能や心まで育てていく強さを持っている方。私も後輩に、こんな風に教えたり接したりできたらいいなと、人を育てる視点でも学ばせてもらっています。
何より、ご自身のコンプレックスや心の葛藤までも歌に昇華し、エネルギーとして爆発させている姿がとにかくかっこいい!弱さや怒りさえも音楽に変え、多くの人の共感を呼んでいるのは、まさに表現の本質だと思います。
私自身、思い詰めてメンタルを崩しやすい時期もありました。でも私にはお芝居があったから、演技を通して言葉にならない感情を発散できた。そこに救われていた気がするんです。
傷ついたことも、悔しかったことも、芝居という表現に託して。皆さんに届けていけたらいいなと思います。
田中麗奈さん profile
1980年生まれ、福岡県出身。1998年に、映画『がんばっていきまっしょい』で初主演を果たし、日本アカデミー賞主演女優賞をはじめ、数々の新人賞を受賞。以降、映画、ドラマ、舞台などで幅広い役柄で活躍。現在公開中の映画『黄金泥棒』では主演を務める。NHK ドラマ10『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』<全10回 毎週火曜22:00~22・45> に出演中。
撮影/酒井貴生(aosora) ヘアメーク/ 岡野瑞恵 スタイリスト/朝倉 豊 取材・文/渡部夕子
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