山本耕史さん(49歳)「オファーは僕のカラダ目当てらしいです(笑)」全編英語ミュージカルへの挑戦

出る作品に外れなしと言われる、日本のエンタメ界に欠かせない俳優・山本耕史さん。とくに舞台・ミュージカルでの安定した活躍ぶりは国民的俳優と言っていいほど。8月19日に東京で初演をむかえる日米合作ミュージカル『フル・モンティ』は、そんな彼の情熱と実力が炸裂する話題作。作品に挑む山本さんの意気込みや、俳優としてのあり方をうかがいました。彼が作品に愛あれる理由がここに詰まっています。

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山本耕史/1976年10月31日、東京都生まれ。1987年ミュージカル『レ・ミゼラブル』のガブローシュ役で本格的に活動を開始。1998年、ブロードウェイミュージカル『RENT』日本語版初演にて、マーク役を演じる。翌年 1999年の再演にも同役で出演。2003年、2006年、2012年には『RENT』の原作者ジョナサン・ラーソンの生涯を綴った Off Broadway Musicall「tick,tick…BOOM!』に主演のジョナサン役で出演し、2012年には演出、翻訳、訳詞、振付も担当するなど、映像・舞台を問わず、日本のエンタメ界に欠かせない俳優として多岐に渡り活躍中。10月からのドラマ「俺たちの箱根駅伝」(日本テレビ系)にも出演予定。

ミュージカル『RENT』への想いが 今につながっています

今回、演じさせていただく『フル・モンティ』という作品は、2年前に出演した『RENT』というミュージカルからの“地続き”なんです。ふたつの作品はもちろん全く異なるお話ですが、演出家は同じトレイ・エレット氏です。
1998年、21歳の時に『RENT』という偉大な作品に出演させていただいて、2024年に嬉しいことにそれが再演となって、自分の中では舞台人生にひとつ、区切りがついた形になっていました。『RENT』は僕が芝居を続ける目標のような、最終地点のような、これ以上の舞台はない、と思えた存在でしたから。
でも公演が終わった時に、演出家のトレイ・エレットが「次、何やる?」と聞いてきて。その時はよくある社交辞令だと思って「そうだね、何やろうか?」なんて軽く返事をしました。

当然、社交辞令かと思っていたら、彼が「コウジにピッタリの作品があるんだよ」と言って具体的なスケジュールを聞いてくるんですよ。まさか、本気なのか? と驚いていたら案外あれよあれよという間に難しい権利関係がクリアになっていって、気づいたら2026年夏のスケジュールがおさえられていました。
とはいえ、正直言うと僕の中では『RENT』以外はやりたくないという気持ちもありました。

初演の『RENT』の時、自分以外全員ミュージシャンだったので、俳優だけでやっている舞台とは全然別の世界観。それぞれが自分のやり方と美学と使命感で戦いあっていて、他の人が何やっても「そんなの関係ねえ!」って感じで(笑)、優等生がいない現場に衝撃を受けました。その時に深く刻み込まれた経験が自分にとっての舞台の醍醐味だったので、それから多くの舞台に立たせていただきましたが、どこか物足りないというか、刺激や熱さが足りないような気がしていました。

それにあの作品は扱う題材も異質で、時代に逆行するエネルギーにも満ち溢れているんです。ほかの作品とは全然違う。2024年に『RENT』の再演に参加させていただいて、やっぱりこれだ、自分が色々やってきたのもここに辿り着くためなんだ、これぐらいの熱量のあるものしかやりたくないな、と思っていたんです。

『フル・モンティ』のオファーは僕のカラダ目当てらしいです

そんなところに「コウジにピッタリの作品があるんだよ」との言葉ですよ(笑)。その理由はどうやら僕のカラダらしい(笑)。
今回イーヴンという役を演じるスティーブンも『RENT』に出ていたのですが、トレイいわく「二人が並ぶとマーベル(アメリカの人気コミックシリーズ)のヒーローみたいになるはずだ」ということだそうです。

確かにこの作品は、人生に行き詰まっている男たち、人生のどん底であえいでいる冴えない男たちが一念発起して立ち上がり、ストリップで一攫千金を狙う勝負に出て、人生へのリベンジを果たすお話です。
お話の中には、スキンシップがなくなってきた夫婦やいまだに母親と住んでいる弱い男もと登場します。それぞれの鬱屈や葛藤を、全裸になることで、脱ぎ捨てて解放していく。着飾るのではなく、潔く脱ぐことで「この瞬間だけは、うまくいかない自分とおさらばするぜ!」と叫ぶんです。
こんなにも裸というものが、取り払ってありのままになるということが強いと実感できる、素晴らしいメッセージが込められています。

そんなストーリーの中で“脱ぐ”という見せ場はマストですから、ふだんからある程度体作りをしている僕のカラダを見込んでのオファーでしょう(笑)。
だらしない体では出ちゃいけないと思うから、体作りはこれから少しずつ進めていく予定。ボディビルダーのような体というより、少しちっちゃくするようなイメージで絞っていこうかなと思っています。

全編英語の『フル・モンティ』。 英語力はここ2年であまり進化していません

このミュージカルの見どころのひとつは全編英語という点。『RENT』と同じく、自分以外ほぼアメリカのキャストで全編英語、それも英語のセリフが前回の4倍ほど。『RENT』が歌8割、セリフ2割だったのに、『フル・モンティ』は歌2割、セリフ8割なんです。前回のセリフはほぼ一人語りだったので自分のタイミングで話せたけど、今回はセリフの応酬、会話なので、さらにハードルが高い。いくら相手のセリフを覚えていても、舞台上では何喋っているか聞き取れないことも多くて。

2年前の『RENT』のために、ある程度学んだものの、英語はいつまでたっても難関です。今回も苦労するのは目に見えてる(笑)。でも、なんか楽なことばかりやっていても仕方ない。いや、もちろん楽ちんなのは歓迎ではあるんだけど、どうせやるのであれば、これぐらいハードルが高いほうが、やりがい
はありますね。

どんなものになるか想像もつかない恐ろしさですが、どうせやるならこれくらい高い壁じゃないとやる意味がないとも思うので、武者震いして待ち構えているところです(笑)。でもだいたい、ありとあらゆることをやって来たし、僕は舞台に出て何かをちゃんと表現して、舞台の素晴らしさをみんなに伝えたい! なんて大層な志がある表現者ではないんですよ。

もちろん何でもいいというわけではないけど、きちんとした作品という大前提をクリアしていて、そこで自分の居場所を見つけて役割を果たしたい。
シンプルに、それだけなんですよね。

息子のためには何でもする。 主人公・ジェリーの想いに共感します

また『フル・モンティ』のテーマのひとつは父子。僕が演じるジェリー そこはすごく共感できますね。何の迷いもなく自分の息子のために奔走するという想いがこの役の核のひとつ。僕も子どものためには何でもすると思うから、そういう共通点も演出のトレイは考えてくれていたのかな。

僕は自分が出演している公演を家族に観劇してもらう事もありますからね。父親と子どもの絆や機微が作品の重要な鍵となってくるところも、何か縁を感じます。

日米合作ブロードウェイミュージカル『フル・モンティ』


【東京公演】8月19日〜9月7日(東京国際フォーラム ホールC)
【大阪公演】9月10日〜9月14日(新歌舞伎座)
※全編英語上演(日本語字幕あり)
1997年の映画をもとに誕生し、トニー賞作品賞含む9部門にノミネートされた傑作コメディ・ミュージカル『フル・モンティ』が、日米合同制作の新作ミュージカルとして東京・大阪で上演。全編英語(日本語字幕あり)で描かれる、男たちの友情と再生の物語は主演に山本耕史を迎え、共演には本作でミュージカル初挑戦を果たすゆりやんレトリィバア、さらに、ブロードウェイで活躍する実力派キャストが集結。

撮影/加治屋圭斗 ヘア・メーク/西岡和彦 スタイリスト/笠井時夢 取材/柏崎恵理
衣装/スタイリスト私物

美ST