中山優馬さん「逃げ出したい朝」もあるけれど、課題と向き合っている時間が、実は一番充実している

確かな演技力と存在感で幅広く活躍する中山優馬さんが、鴻上尚史さんが作・演出する舞台に7年ぶりに出演します。作品は、劇団「第三舞台」のメンバーが2026年版のユニット「第三舞台2026」として15年ぶりに再結集する、新作『パレイドリア』。澄んだ大きな目が印象的な32歳に、稽古の様子や舞台の面白さ、ご家族の話など、たっぷり伺いました。

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――今回が3本目の鴻上作品への出演となる中山さん。鴻上さんご自身にはどんな印象をお持ちですか?

少年みたいな人、ですかね。この間、第三舞台の皆さんが、1回子どもに返って楽しんでみるっていうシーンの稽古があったんですけど、それを見ている鴻上さんも一緒に子どもみたいな表情になって楽しんでいて(笑)。もちろん、ご自身で書いて演出もされている天才ではあるんですけど、何十年もこんなに純粋に楽しいものを追い続けているなんて、少年の心がないとできないだろうな、遊び心をすごく持った方だなと、あらためて思いました。

課題が見えることで次のやる気も湧いてくる

――中山さんにとって、鴻上さんはどんな存在ですか?

演劇の楽しさとか、演劇だからこそできる表現を教えてもらった方です。鴻上さんの作品には、他の演出家さんとはちょっと違うスピード感と劇作方法があって、セリフのテンポも早いんですけど、たとえばひとつのセリフの中の1行目と2行目が全く違う感情で書かれていたりするんです。しかも、それをグラデーションで表現するんじゃなくて、そこで瞬間的に感情を変化させることや、“今すごく悲しいのに、楽しいことをやっている”という表現を求められる。だから、すごく難しいんですけど、それが鴻上さんの作品で描かれる人間の感情の豊かさだし、そういうことに挑戦できて楽しいです。

――難しいからこそ、やりがいも感じるわけですね。

そうですね。もう一つ、鴻上さんには、演劇はチームプレイであるということ、自分だけではどうにもならないし、自分だけでどうにかしなくていいということを、強く教えてもらったなと思います。お芝居で相手にパスをもらって、そのパスを繋いでいくと、ちゃんとゴールが決まっているというのが、鴻上さんの脚本なんです。だから楽しいんですよね。で、毎回「ここはもっとこうしよう」とか「もっとこうすればよかった」みたいな課題も見えてくるから、またやりたいと思うんです。観劇初心者の方も絶対に楽しめると思います。

気圧されたからこそ、のめり込んだ

――舞台での活動が近年主軸になっている中山さん。舞台に力を入れようと思われたきっかけがあったら教えてください。

もともと僕はお芝居がすごく好きで、15歳ぐらいの時にはもう「役者になりたい」というふうに思ってました。で、16歳で初舞台を踏ませてもらうことになったんですけど、全然できると思っていたんですね。「舞台は怖いぞ」とか「舞台には魔物がいる」みたいなことも聞いていたんですけど、そんなん嘘やと思っていたから。でも舞台上に出て、ひと言目のセリフをいきなり間違えたんですよ(苦笑)。それでもう自分がびっくりして。

――それは周りもびっくりしたでしょうね。頭が真っ白になってセリフが飛んでしまったのですか?

真っ白になったっていう感覚でもなくて、とにかく口から出たのがいきなり全然違う言葉だったんです。だから、そんな自分にすごくびっくりして。それで、のめり込んでいった感じですね。余裕でできると思っていたのに、余裕で気圧された舞台というものに。

――そこで「もう二度とやらない」とはならずに、のめり込んでいったところがさすがです。「舞台って面白いな」と感じるようになったのは、いつ頃ですか?

22、3歳ぐらいですかね。役を演じている時は人前に立っていても恥ずかしくないんだな、舞台の上で役として生きている時は何だってできるなと実感して。逆に、素で人前に立つのは、いまだに恥ずかしかったりします。コンサートの時は1個キャラクターを乗っけてる感じがあるので、まだ大丈夫なんですけど、ファンミーティングはどうも恥ずかしくて(照笑)。

仕事、悩みがあることで気分が高まります

――「演じる仕事をしてよかったな」と思うのは、どういう時ですか?

僕の場合は、役者の仕事をもらって、それに悩んでる時の方が人生うまくいってる感じがあるんですね。何か一つ向き合うことがあることで、ご飯が美味しくなったり、寝ることが大切になったり、作品を観た時に受け取る感情が大きくなったりする。逆に、休みが続いて「何してもいいねんで、この期間は」って言われると、もう何していいかわかんなくなるんです。一つ枷があるというか、課題を抱えていた方が、自分は体調もいいみたいです。

逃げ出したくなることも、めちゃくちゃあります

――チャレンジ精神旺盛な中山さんですが、逃げ出したくなることはないのですか?

それは、めちゃくちゃありますよ。鴻上さんの現場は楽しいから、早く稽古したいなと思いますけど、たとえばドラマや映画を撮ってる時に「今日こそ逃げてやろう」とか「今逃げたらどうなっちゃうんだろう」と思うことは、しょっちゅうあります。もちろん、行けば行ったで楽しいし、「今日も100%の力を出せてよかった」と思うんですけど、それができない時は不安になるし、それができたところで評価されなかったら何の意味があるんだろう?って思うこともあるし……。そういうことの繰り返しですね。だから、目が覚めて「今日こそ家を出ないぞ」って思うことはたくさんあります。でも皆さん、そうじゃないですか?

――そうですね。気が進まないことからは、逃げ出したくもなります。

ですよね。でも大抵「ここで逃げたら誰かが迷惑するし」とか「逃げたところで明日からご飯を食べられるわけじゃないし」みたいなことを考えて、起きて支度を始める。僕の場合も、「逃げたらどうなるんだろう? たぶん大阪でひっそり暮らすことになるな。でも、何かしら仕事をしなきゃご飯は食べられないし……。さ、そんなこと考えてないで、今日も行こうぜ」っていう感じです(笑)。

自分の判断が迅速な行動へのプロセスに

――なるほど(笑)。事務所を独立なさって約1年半経ちますが、今どんなふうに感じていらっしゃいますか。

いろんなことにチャレンジできているなと思います。地方のお祭りに呼んでもらったり、好きな競馬番組に出してもらったりと、やれることの幅も広がったし、楽曲も出して、ライブもできて、わりといい1年半だったんじゃないかなと。いろんなことを盛りだくさんにやれたのは、やっぱり独立して、自分の判断ですぐにOKが出せるから。そういうふうにスピード感を持って動けるようになったのは、いいところかもしれないです。

――今後どんなことをやっていきたいですか?

ライブもやるし、歌もダンスもやるし、お芝居もするしっていうところは、これまでと全く変わらずやっていくつもりです。ただ、今までやったことがないような新しい何かに出合った時には、積極的にやっていきたいなと思ってます。

いろんな感情になれる瞬間をたくさん作りたい

――やってみたい役があったら教えてください。

やってみたい役は正直あんまりないんですよね。でも、出合ったことのない感情には出合ってみたいですし、何かこう、いろんな感情になれる瞬間をたくさん作りたいですね。そういう瞬間を、ぜひ観てもらえたらなと思います。

中山優馬さんProfile

なかやま・ゆうま/1994年、大阪府生まれ。2008年にドラマ『バッテリー』の主演で俳優デビュー。以来、ドラマ、映画、舞台など多くの作品に出演。近年の主な出演作は、ドラマ『雪煙チェイス』『浮浪雲』、舞台『大誘拐〜四人で大スペクタクル〜』『あゝ同期の桜』『スイートホーム ビターホーム』、ミュージカル『破果 パグァ』など。秋には舞台『蛙昇天』の出演も控える。音楽活動も精力的に行い、「ReTRY」「SPARK」が配信中。

紀伊國屋書店創業100周年記念公演 「第三舞台2026」『パレイドリア』

42年前のある出来事をきっかけに、バラバラになった大学時代の児童ボランティアサークルの仲間たち。認知症と診断された仲間の一人・乾が「上演できなかったあの芝居をもう一度やろう」と言い出したことで、止まっていた時間が動き始めるが……。

作・演出/鴻上尚史 出演/大高洋夫 小須田康人 長野里美 山下裕子 筒井真理子(映像出演) 中山優馬 飯窪春菜 小松準弥 安西慎太郎 渡辺芳博 ほか

2026年8月9日〜30日/東京・紀伊國屋ホール 9月に大阪、新潟、愛媛、北九州公演あり

https://www.thirdstage.com/daisanbutai2026/

取材・文/岡﨑 香 ヘアメイク/小林綾子 スタイリスト/柴田拡美 撮影/古水 良

衣装協力/バナナ・リパブリック(br_info@bananarepublic.jp)

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