ファーストサマーウイカさん、今ハラスメントを受ける以上に気になるのが自分が「する側」に立つ恐怖

今回、ファーストサマーウイカさんが挑戦される役どころは、“社会の理不尽”、“常識の壁”という、とてつもなく大きなものに立ち向かう女性。ウイカさんご自身は、ガチガチの社会の常識や個体概念にとらわれることなく、至極自由。SNSなど情報化が進む今、そんな“新しい常識”との付き合い方をお聞きしてみました!

30数年前の常識は、今の常識とは別もの……!?

今回、私が演じたのは日本初のハラスメント裁判で、訴訟に挑んだ原告女性。バブル期の実際の裁判から着想を得たストーリーなのですが、台本を受け取り、「三十数年前はこれが常識だったの!?」と、まず衝撃を受けました。私が演じた「上原恵」が戦ったのは、男性上司だけじゃなく、「女性は結婚までの“腰掛け”として働く存在」という社会の風潮と、世間の色眼鏡。1990年に生まれた私は、“今の当たり前”は“その頃の当たり前”じゃなく、全く違った常識があったのだということが信じられませんでした。その時代の真っ只中で生きてきた私の親世代は、「昔は良かったね」ということあるようですが、
絶対に「変わってよかった」という部分もあるはずです。

景気の良さはもちろん、ファッションの華やかさやは「昔は良かった」かもしれないけれど、今は、当時に比べたらまだ皆が生きやすい社会に進んでいると思います。常識は変わるもので、その背景には常識を変えるべく挑んだ人がいるのだ、と台本を手にしながら、改めて思いました。

以前に「STORY」が“原告A子”を取材した記事も、役作りとして読んでいました!

2019年11月号「STORY」 連載チャレンジストーリー「今ハラスメントにノーということが未来を拓く」に掲載された原告晴野まゆみさんの取材記事

「実話に着想を得たフィクション」ということもあり、役作りとして当時の資料を読んだり、実際に裁判に傍聴に行ったりして、勉強しました。そう、資料の中には以前に「STORY」が取材した記事もあったんですよ!2019年の「今ハラスメントにノーということが未来を拓く」という特集の中に、偶然にも、私が演じた「原告A子」、恵の着想元となった晴野まゆみさんが1ページにわたり取材されていたんです。

出版社で精力的に仕事をこなし社内外から評判を上げる中、仕事にルーズな男性編集長から「夜遊び盛んな不潔な女」と悪評を立てられたという当時の状況を語っていらっしゃいました。

私自身も、晴野さんに実際にお会いして、ご本人しか感じられない景色、心の内にある大事なこと――演じるにあたって削ぎ落してはいけない大切な部分を探すため、直接お話させていただきました。晴野さんは、撮影現場にも見学に来てくださったのですが、ものすごく明るい方で、いらっしゃると、現場が明るくなるんです。でも、物語のクライマックス、綾瀬はるかさんが演じる弁護士による最終弁論のシーンでは撮影セットの隅で見学される晴野さんは、当時のことを思いだしてか、泣いていらっしゃいました。

原告席に座る私も泣いていたので、実際の「原告A子」、それを演じる私「原告A子」二人の「原告A子」が、その空間で涙していました。

今の時代、知らず知らずのうちにハラスメントをする側に立つ恐怖と背中合わせ

私自身、今回演じた“恵”に共感するのは、最初に弁護士事務所に相談に行った際の言葉にある「傷ついてもいい、泣き寝入りしたくない」というスピリッツ。これは、私の生きるモットーでもあります。小さなことであっても、「面倒くさい」とか「まあ、いいや」とか、「自分が我慢すればいいか」といったことは極力せずに、相手と話をして、その原因から解消しておきたいです。

それも、先輩たちの恩恵を受け、ハラスメントを受けた時に「ノー」と言える勇気や、それを受け入れられる社会になってきているからでしょう。一方で、今の時代の風潮に加え、自身が30代半ばになってきたこともあって、ハラスメントを受ける以上に気になるのが、知らず知らずのうちに、自分がハラスメント側に立ってしまう恐怖。自分が良かれと思って指導したことや、アドバイスしたことが、受け取る側には「パワハラだ」「モラハラだ」となる場合もあります「STORY」の読者さん層は、責任ある仕事や立場を任されているたり、中間管理職に就いている方も多いと思うので、きっと他人ごとじゃないのでは……?

特に女性は、自分のライフステージと色々バランスを取りながら頑張る中で「昔はよかった」ということもあるでしょうし、「えっ? こっちが悪者になっちゃうの?」とか、「もう何も言えないじゃん!」なんて、八方塞になることも、あるかもしれません。今は、自分の意図することなくハラスメントをする側にならないように、自衛をしなければいけない社会になってきていますよね。

何年か前までは、「セクハラ」とか「パワハラ」に「モラハラ」くらいだったけれど、「カスタマーハラスメント」に「アルコールハラスメント」……と、ハラスメントの種類も増えて、その分、受け取り手によっては、自身が加害者になる可能性が高くなってしまいます。
そう考えると、ありきたりな言葉かもしれないですけれど、「人への思いやり」だったり、「相手の立場に立って考える」という、もう、人として初歩的なことが大事なのだと思います。

社会の常識や誰かに押し付けられた枠の中で判断するのではなく、自分基準の幸せを!

でも、今はSNSが象徴するように、概してそれが失われがちです。
一人を標的にしたら、皆で一斉によってたかってと攻撃してしまう……。この映画のテーマの一つは、「常識を覆す」ということですが、「今、正しいと思っているその常識は、本当に正しいですか――?」と問い直すことが必要なのだと思います。年齢を重ねるとだんだん頑固になって、そんなことも考えられなくなりがちです。

映画の中で、“恵”が綾瀬さん演じる担当弁護士の家を訪れた際、外ではバリバリ働きながら、家では子どもを背中にしょって家事をする姿を見て、私演じる恵が、「女の幸せも諦めなかったってことですか?」と質問をするシーンがあります。そうしたら、「女の幸せって何?」って、逆に質問を回収されるんですね。

それで、ハッとさせられるわけです。確かに「女の幸せってなんだろう?」って。そんなふうに固定概念に縛られる恵の姿は、私だって他人ごとじゃないだけに印象に残るシーンです。

きっと、「STORY」読者の皆さんも、“人と比べない自分にとっての幸せ”は胸にあると思うのですが、SNSを見ると、つい他人の私生活が気になり始めてしまうのが、常ですよね。私自身、誰かの常識に囚われるのは、やめたいですし、誰かに押し付けられたり、勝手に決められた枠組みの中で、闇雲に幸せを追うのは、危険だと思います。もしかしたら、社会の常識が間違っていることだってありますから。自分の幸せ基準で生きることが、本当の意味で「幸せ」なのだと思います。

ファーストサマーウイカ

1990年生まれ、大阪府出身。2009年から芝居の世界に入り、2013年にアイドルグループBiSに加入。解散後も音楽活動を続け、2021年にソロデビュー。主な出演作にNHK大河ドラマ「光る君へ」(24)、『花まんま』(25)、「バナ穴BANA_ANA」(26)、「シャドウワーク」(26)など。

今回、ファーストサマーウイカさんが出演したのは……

©2026「ファーストボイス」製作委員会

『ファーストボイス』

監督:前田 哲
出演:綾瀬はるか
ファーストサマーウイカ、松本穂香
峯村リエ、山田真歩、工藤阿須加、水川かたまり(空気階段)/ 鈴鹿央士、迫田孝也、酒向芳
木村多江、筒井道隆
ディスコでミラーボールが煌めき、日本が好景気に沸いた1989年――。寝ぐせ頭で法廷に駆け込む日々を送り、お金にならない案件ばかりを受けてしまうお人好しの弁護士・朝日道子(綾瀬はるか)。そんな彼女のもとに、職場で理不尽な嫌がらせを受け、大好きな仕事をも奪われたとして、会社と上司を相手に提訴をしたいという女性・恵(ファーストサマーウイカ)が訪れる。しかし、それは誰も戦ったことのない前例なき「ハラスメント」を巡る裁判。新人弁護士の栞(松本穂香)は「勝ち目がない」と反対するが、朝日は「この裁判は必ず未来に繋がる」と立ち上がる。彼女たちの前に立ちはだかるのは、“常識”という巨大な壁。それでも踏み出した勇気ある一歩と最初の一声“ファーストボイス”が、日本社会を揺り動かしていく――!2026年10月2日(金)全国ロードショー!

プリントワンピース¥53900円(TAAKK/JOYEUX)
〈お問合せ先〉JOYEUX ☎03-4361-4464

撮影/田頭拓人 ヘアメイク/吉田 真妃 スタイリスト/近藤 伊代 取材・構成/河合由樹

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