田中みな実さん、「40代もまたイメージを一新するくらいに変化していきたい――」

これまでのキャラから一転、その熱演で話題を呼んだ「M」の秘書役にはじまり、
孤独な独身エッセイスト、バリバリのキャリアウーマンにお嬢奥様……。
キー局からフリーになりいつの間にか女優として確固たる場所を確立した田中みな実さん。
もう、“ブリっ子”と言われた局アナ時代のイメージは、今や昔。
今回の映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』でも作品の鍵となる“女優”という役どころ。
一つのイメージにとどまらず、次々に様々な役柄を演じ、新鮮なイメージへと
塗り替えていく自己プロデュース力がお見事!
そこで、今年11月に40歳を迎えるみな実さんに、今、そして40代の展望をお聞きしてみました!

生成AIとのかかわり方について考えるきっかけに

今回、私が出演させていただいた作品は、人間がAIによって振り回され、翻弄されるストーリー。
今作が「AIとのかかわり方」について考えるきっかけになればいいなと思います。
私自身、生成AIをテーマにした作品に携わったことがなかたので非常に興味を惹かれましたし、
オリジナル脚本というところも新鮮でした。

映画の場合、多くは撮影から公開までをおよそ1年以上かけることが多いようですが、
この作品にかんしては今年の1~2月に撮影したものが、9月に公開されるという
異例のスピード感で制作されました。「生成AI」をテーマにした作品を、
鮮度を大切にしながら皆さんにお届けしたいという制作陣の想いを強く感じましたね。

個人的に生成AIにはあまり馴染みがなくて、七希のように大事なことを委ねることもなければ、
何かを頼ったり、拠り所にするということもありません。個人情報を与えてしまう怖さがあって
なかなか踏み込んだことが聞けないんですよね。
使うことがあるとすれば、海外のお友達とやりとりをする際のカジュアルな表現を参考にしたくて、
翻訳アプリ感覚で利用する程度です。
若い頃は友人や目上の人、尊敬する人など、誰かや何かを拠り所にすることが
あったかもしれませんが、40歳という年齢を目前にして、
「本当に信じられるのは、自身が経験してきたことだけ」という
気がしています。拠り所にしたその答えが必ずしも正しいとは限らない。
他の誰かが導いた答えを指針にした結果、思うような結果を得られなかったときに、
その誰かに対してがっかりしてしまいそうだし。ならば、自分で解決する他ないですよね。
経験してきたことを誇りに、そして拠り所にしています。
そのときは無駄だと思われるような経験も決して無駄ではなく、
今の自分を形成する上で大切な要素になっています。きれいごとに聞こえてしまいそうですが、
本当にそうだと実感することが近頃、増えました。
父の仕事の都合で過ごした海外での幼少期、中学・高校での女子校生活、局アナ時代……、
すべてが、何かを選択する際の指針になっているのだと思います。

これからの子供たちは生まれた時からAIが身近にあるのが当たり前で、
それとうまく共存していかなければならない。なんだか少しゾッとします。
自分で考えるよりも先に、親に相談するよりも先に、AIを拠り所にしてしまうのかな、とか。
失敗を恐れて、事前に調べてから人と対話する。
それって果たして健全なのかと、考えさせられます。

自身が発信できるプラットフォームは持たないことにしています

SNSの類を自分では持たないことにしています。
見るだけのアカウントはありますが、投稿したことはありません。
それでも今の時代、映画やドラマの作品アカウントがあったり、各社のネットニュースやら、
切り抜き動画、流れてくる情報の中に自分の名前を目にする機会は少なくありません。
見ていて気持ちの良い内容なんて無いに等しく、ほとんどが否定的なものだから、
わざわざ見にいく必要性を感じなくて、自分のプラットフォームを所有しないことにしています。

アナウンサー時代からずっとパーソナリティを続けているラジオ番組は、
唯一フリーで発言できる場なのですが、ここで話したこともまた、必ず何かしらのコタツ記事になって、
意図しない広がりをみせることもしばしば。
メディアで発信している以上、様々なご意見やご批判があることは当然ですし、
「なら、喋らない」という選択をとるのも自分次第。
ラジオをやめれば、放送後毎週のように更新されるネットニュースを回避することはできるのでしょう。
でも、放送が意図しない切り取られ方をして面白がられたり批判されることを苦に、
14年間大切に積み上げてきたラジオ番組を手放してしまうのも、なんだか腑に落ちないなと。
話題にしていただけるのは有難いことですが、悪意を持った論調のものも少なくないなと。
SNSを通して応援してくださっている方々と繋がれる喜びがあることも理解している一方で、
わざわざ心がザワザワする材料を増やしたくない思いもあるのです。

“ブリっ子”“あざとい”“美容の人”……。 イメージに足をすくわれたり、助けられたり

いま、世間が私に何かしらのイメージを持ってくださっているのだとしたら、
“美容の人”“ストイック”みたいなことなのでしょうか。
アナウンサー時代は“ブリっ子”、退社後は担当させていただいたバラエティー番組の
イメージから“あざとい”、30代半ばを過ぎて独身であることで“こじらせている”などなど、
イメージは勝手に変遷していきました。
今となっては“ブリっ子”“あざとい”なんてイメージは、どこへやら……。
むしろ、口うるさい、怖いという印象さえ持たれているかもしれません(笑)。
共演した重岡君にも、都度「また、みな実さんに怒られる!」なんて、怖がられていましたから(笑)。
こんなにも強く逞しくなることは想定外でしたが、
40歳近くまで独りで生きてきたら、強くなりますよね。
ある程度強くないとこの仕事をやってこられなかったんだと思うんです。
そんな“イメージ”というものに、縛られたり足をすくわれたり、一方で助けられ得をしてきたことも事実。
“俳優”と認識していただけるまでには、まだあと10年近くはかかるかな~。
どうみられていてもいいんですけどね。
あらゆる印象が邪魔をして作品をストレートに楽しんでいただいけないのは
残念だなと思うことはあるので。自ら望んでついたイメージはひとつもなく、
気付いたらあらゆるイメージの変遷をたどっていました。「次は何キャラにされるのだろう?」と、
自分のことながらどこか面白がっています。

そして、この年齢になって一層強く思うのは、自分に飽きたくないということ。
この先の40代50代は、きっと経験値でやっていけることがほとんどで、
新しいことに挑戦することや失敗することがどんどん怖くなっていくし、
そんな危ない橋を渡る必要もないと思うんです。
ただ、私は俳優としてはまだまだひよっこだから、自ら進んで刺激を受けて、
恥をかいて、変化していきたいと思っています。
これから先も変化を恐れず、自分にワクワクできる人でありたいです。

Minami Tanaka

1986年生まれ。2019年の「絶対正義」でTVドラマ初出演。映画『ずっと独身でいるつもり?』(21)で映画初出演を務め、近年はTVドラマ「あなたがしてくれなくても」(23)、「Destiny」(24)、「ギークス~警察署の変人たち~」(24)、「ブラックペアン シーズン2」(24)、「愛の、がっこう。」(25)、「フェイクマミー」(25)など話題作の出演が続いている。9月17日(木)から配信されるNetflixシリーズ「ダウンタイム」に出演。

田中みな実さんが出演した映画は……

『5秒で完全犯罪を生成する方法』
監督:近藤亮太
出演:重岡大毅、原 菜乃華
田中みな実
伊藤 歩、黒田大輔、森岡 龍、九十九黄助
石丸幹二

フリーライターの初海航は、意図せず殺人を犯した妹・幸来を守るため、生成AIを駆使して事件を隠蔽しようと思いつく。AIの指示に従って、指紋を拭き去り、死体に死化粧を施し、更にアリバイを工作。無事警察の事情聴取をクリアしたかに思われた二人だったが、事件は世間を騒がせる連続殺人事件と同じ手口だと知らされる。思いもよらない展開を見せ始めた事態の真相を探るうち、航はトップ女優七希にたどり着く。果たして兄妹の完全犯罪の行方は――? 全国公開中。

 

撮影/西崎博哉(MOUSTACHE) 取材・構成/河合由樹

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