世界最高峰の国立バレエ団がやってくる!【王子様の推しドコロ:番外編】

vol.12 パリ・オペラ座バレエ団

©Jean-Pierre Delagarde/OnP

フランス・パリを本拠地とし世界最古の国立バレエ団にして、世界最高峰の4大バレエ団のひとつとして知られる「パリ・オペラ座バレエ団」。363年の歴史を持ち、エレガンスを極めた格式高いバレエ団が、2024年2月8日~18日にわたり来日公演をします。

バレエ団としての来日は、コロナ禍直前の2020年2月以で4年ぶり。前回の来日は世界的にコロナウイルスが蔓延し始めたころだったにもかかわらず、「ダンスは舞台を見ている間、さまざまな困難を忘れさせ、人の心を癒やすために存在する」という当時の芸術監督オレリー・デュポン氏(現芸術監督はジョゼ・マルティネス氏)の思いのもと来日し、威信を賭けた素晴らしい舞台を見せてくれたパリ・オペラ座バレエ団のダンサーたち。

4年の間に世代交代もあり、今回の公演は殿堂入りのスターダンサーからフレッシュなエトワールまで幅広い層が活躍する舞台になります。

『白鳥の湖』にてポール・マルクさん ©Yonathan Kellerman/OnP

『マノン』にてユーゴ・マルシャンさん ©Julien Benhamou/OnP

パリ・オペラ座バレエ団って?

バレエを愛したルイ14世が1669年に創設した、世界最高峰の国立バレエ団「パリ・オペラ座バレエ団」。バレエの歴史そのものがパリ・オペラ座と言っても過言ではないほど格式高く、ガルニエ宮と呼ばれるシャガールの天井画で有名な絢爛豪華な歌劇場を本拠地とし(現在はオペラ・バスティーユでも上演)、バレエダンサーを夢見る若者の憧れのようなバレエ団です。

19世紀前半には『ジゼル』『ラ・シルフィード』などのロマンティック・バレエの代表作を初演。気品に溢れ、優雅でエレガントな踊りの様式が特徴的で、マリー・タリオーニ、ローラン・プティ、マニュエル・ルグリ、シルヴィ・ギエムなど、大スターを生み出し続けています。また、厳しい階級制度でも知られ、上から、主役を踊る最高位のエトワール、プルミエ・ダンスール(プルミエール・ダンスーズ)、スジェ、コリュフェ、カドリーユの順に階級分けされ、どの階級も人数が決められています。

『マノン』にて、マチュー・ガニオさん ©Julien Benhamou/OnP

『白鳥の湖』にてギヨーム・ディオップさん ©Yonathan Kellerman/OnP

今回の公演演目は、『白鳥の湖』と『マノン』。

チャイコフスキーが初めて作曲したバレエ音楽『白鳥の湖』ですが、実は様々な振付家が演出を手がけており、バレエ団によってその解釈や結末、演出法が違う作品。パリ・オペラ座バレエ団のヌレエフ版は、悪魔が王子の家庭教師として巧みに騙していく演出。悪魔が魅力的そして存在感のある立ち位置として描かれており、白鳥(黒鳥)と王子の踊りだけでなく悪魔と王子の踊りも見せ場となる、コアなファンのいる新鮮な演出版。日本では18年ぶりの上演となります。

『マノン』は、溢れ出る魅力で男性たちを破滅へと導くファムファタール、マノンとデ・グリューの激動の悲恋を描いたアベ・プレヴォーの『マノン・レスコー』が原作。『ロミオとジュエット』と並ぶ、振付家ケネス・マクミランの代表作で、演劇的な振り付けや演出を駆使したドラマティック・バレエの傑作。特に重力をいとも簡単に操り高度なテクニックを要する「寝室のパ・ド・ドゥ」や「沼地のパ・ド・ドゥ」は一見の価値あり。パリ・オペラ座バレエ団の『マノン』は、なんと日本初上演となります。

日本公演ならではの贅沢な配役に注目!

長くエトワールを務める大スターから、次世代のオペラ座を担う才能溢れる若手ダンサーまで幅広い層が活躍する贅沢な来日公演。今回の公演では、このエトワールの“王子様ダンサー”4名に注目しています!

Mathieu Ganio

©James Bort/OnP

PROFILE

マチュー・ガニオさん/1984年生まれ、フランス・マルセイユ出身。身長182㎝。パリ・オペラ座団を代表するエトワールダンサー。母はパリ・オペラ座バレエ団の元エトワール、父はローラン・プティ・マルセイユ・バレエ団の元プリンシパルというサラブレッド。早くから才能を開花させ2001年に入団し、2003年コリュフェ、2004年スジェに昇進すると飛び級後、2004年5月に20歳という最年少記録でエトワールに。

神々しい彫刻のような美しい容姿とフレンチスタイルを体現するエレガントな踊りは日本でも大人気で、あの『徹子の部屋』に出演したことも。42歳での定年退職が決まっているパリ・オペラ座バレエ団、マチューさんは現在39歳なので、バレエ団での来日公演の全幕演目で主役を踊るのはもう数えるほど。貴重な機会となっています。今回の来日公演では『マノン』のデ・グリューを踊る予定。

Hugo Marchand

©Matthew Brookes/OnP

PROFILE

ユーゴ・マルシャンさん/1993年生まれ、フランス・ナント出身。身長191㎝。パリ・オペラ座バレエ学校卒業後、2011年にパリ・オペラ座バレエ団に入団。順調に昇進し2017年にエトワールに。

バレエ団においても格段に高い長身を生かした、ダイナミックでありながらも着地音のしない軽やかなジャンプ、精確性に優れたテクニックで魅了する、華々しいキャリアをもつダンサー。大型犬のような大らかで優しいムードと、ワイルドで色っぽい雰囲気を持ち合わせた唯一無二の存在感で進化し続け、見事な体躯を生かした安定したパートナリングにも定評があります。今回は『マノン』のデ・グリューを踊る予定。

Paul Marque

©James Bort/OnP

PROFILE

ポール・マルクさん/1997年生まれ、フランス・ランド州出身。10歳でパリ・オペラ座バレエ学校入学し、卒業後、パリ・オペラ座バレエに入団。2018年にプルミエール・ダンスールに昇格した時点でエトワールの役をこなす多才ぶりを発揮。2020年、エトワールにスピード昇格。

2016年にはヴァルナ国際バレエコンクールで金賞を受賞するほどの高い技術を持つポールさん。目を見張るほどの高くクリアな跳躍を見せながら、踊りのスタイルはあくまでもエレガント。ステップや回転技術を正確に見せる基礎を追求したダンスノーブルな存在感で、今回は『白鳥の湖』のジークフリート王子を踊る予定。

Guillaume Diop

©James Bort/OnP

PROFILE

ギヨーム・ディオップさん/2000年生まれ、フランス・パリ出身。コンセルヴァトワールでバレエを学んだ後、2012年、パリ・オペラ座バレエ学校に入学。2018年にパリ・オペラ座バレエ団に入団。2022年コリフェ、2023年スジェに昇格し、2023年3月、なんと飛び級をしてエトワールに任命!

溢れる透明感と柔らかくしなやかな踊りで、バレエ団の未来を担う若きエトワールとなったギヨームさん。コリフェに昇格前のカドリーユ時代に、代役として主役に抜擢され、そのフレッシュな存在感で一気に注目を浴び、入団5年で恐るべき華やかな実績を築いた実力派です。華やかなスターオーラを持ち、今回は『白鳥の湖』のジークフリート王子を踊る予定。

4人の姿が見られるのは……パリ・オペラ座バレエ日本公演『白鳥の湖』『マノン』(2023年2月8日~)

フランス・パリの象徴とも言える「パリ・オペラ座バレエ団」の4年ぶりとなる来日公演。演目はクラシックバレエの魅力がすべて詰まっていると言われる名作『白鳥の湖』、演劇性に溢れドラマティックな展開に息をのむ『マノン』。初の日本出身エトワール、八菜・オニールも『白鳥の湖』で主演を務めます。マチュー・ガニオさんは2月17日、18日の『マノン』に、ユーゴ・マルシャンさんは2月16日、17日の『マノン』に、ポール・マルクさんは2月9日の『白鳥の湖』に、ギヨーム・ディオップさんは2月10日の『白鳥の湖』に出演予定。いずれも東京文化会館にて。詳しくは、公式ホームページをご確認ください。※すでに全日程の残席はわずかなので、気になる方は早めにチェックを!

取材・文/味澤彩子