【A.B.C-Z】5人体制ではラスト!『ABC座星(スター)劇場2023 ~5 Stars Live Hours~』をレビュー【辛酸なめ子の「おうちで楽しむ」イケメン2023 vol.53】

’12年より毎年上演されているA.B.C-Zのステージ『ABC座』。メンバーの河合郁人さんがグループを脱退するため、5人体制としてはラストとなる公演『ABC座星(スター)劇場2023 ~5 Stars Live Hours~』が帝国劇場で幕を閉じました。グループ結成から15年にわたりともに歩んできたメンバーたち。この5人でのA.B.C-Zにとしては集大成となる今回のステージの模様を辛酸さんにレポートしていただきました。

5人体制最後の『ABC座』は怒涛の59曲を披露

12月、イルミあふれる日比谷の

12月、イルミあふれる日比谷の街でひときわ輝いている5つの星……。A.B.C-Zが演出・主演する舞台『ABC座星(スター)劇場2023 ~5 Stars Live Hours~』が帝国劇場で上演されました。『ABC座』は2012年より毎年行われている舞台ですが、今回は全59曲をパフォーマンスする怒濤の構成。コンサート会場ではなく劇場なのでお客さんは声を上げたり立ち上がることはできず、静かにペンライトを振るという奥ゆかしい応援スタイルです。今回、河合郁人が12月21日でグループを脱退するので、5人体制のA.B.C-Zを見られる最後の機会となります。様々な思いを抱いたファンが集まり、会場は静かなざわめきと熱気に満ちていました。
幕が開くと、星の装置「5STAR」に乗る5人の姿が。ラメのジャケットとベストがアイドルオーラを増幅させています。パンフレットで橋本良亮は、コンサート形式なので「オープニングからエンディングまでずっとアイドルでいられるからうれしい」とコメントしていましたが、5人の一挙一動からはアイドルとしてのプロ意識の高さが感じられます。星のサークルが高速回転してもキメポーズで歌えるのがさすがです。塚田僚一と五関晃一にいたっては、星の外側にぶらさがって回転していました。今回はジュニアも多数フィーチャーされていて、小学生と思われるジュニアから20代前半まで、若い才能がA.B.C-Zの世界に花を添えています。客席にはジュニアのペンライトを降っている人も一部いましたが、多くはA.B.C-Z公式グッズのかなり大きなサイズのライトを持っていました。

数々の名曲とパワフルなパフォーマンスで圧倒

一幕の中盤はジュニアをバックに、A.B.C-Zのメンバーが数人ずつ出てきて歌うというスタイル。「恋降る月夜に君想ふ」(King & Prince)、「Believe Your Smile」(V6)、「RUN」(Sexy Zone)、「欲望のレイン」「ね、がんばるよ。」(ともにKinKi Kids)と、次々に名曲がパフォーマンス。ジュニア3人を両脇に従えた橋本良亮の「ね、がんばるよ」というセリフには、これまでの積年の思いが込められているようでした。塚田僚一のバク転も飛び出して、8月まで体調不良で休んでいたとは信じられない身体能力です。そのあとの曲ではバク転の次の瞬間、開脚ジャンプしていました。辛い時にこのアクロバティックな動きを思い出したら乗り切れそうです。楽しい趣向だったのは、ジュニアの小さい子どもたちが体に大きな寿司ネタを巻いて踊る「スシ食いねェ!」(シブがき隊) 。イクラにウニ、タコ、マグロ、鮭などかなりリアルでした。すまし顔で踊る姿はすでにプロ意識が芽生えているようです。ダンスだけでなく、少年たちが歌うとボーイソプラノ感があって癒されます。「抱きしめてTONIGHT」(田原俊彦)、「DAYBREAK」(男闘呼組)、「STAY」(SMAP)、と客層によってはテンションが上がる曲目も。
前半はメドレーであっという間に終わり、二幕へ。今度は5つの星が天井から下がっていて、そこにメンバーが一人一人乗っている状態でスタート。星が天井近く、6mくらいの高さまで上がったのでこのあとどうやって降りるのかと思ったら,下から階段が五台せり上がってきてそこに着地。帝国劇場はセットも豪華です。後半はA.B.C-Zのコンサートのような構成でした。「JODEKI!」「Twinkle Twinkle A.B.C-Z」「花言葉」など、改めて聴くと名曲が多いです。5人それぞれ声質が違い、キャラが立っていますが、一緒に歌うと絶妙なハーモニーに。橋本良亮の湿度が高くセクシーな声、河合郁人の遠くまで届くソウルフルな歌、五関晃一のまっすぐな歌声、塚田僚一のポジティブで元気な歌声、戸塚祥太のときどきワイルドな歌声と表情の豊かさ、など皆さん大人男子として個性が際立っています。
さらにファンサービスも想像以上で、気付いたら通路で踊っていたり、メンバーが2階席まで上がったりしていました。気軽にハイタッチに応えたり、帝国劇場ならではの距離感の近さが。そして近くで見ると皆さんかなり汗をかいていて、運動量の激しさを物語っています。二幕の後半にはアーチと台と照明が合体したような不思議なオブジェ5台が登場し、その上でパフォーマンス。オブジェは合体し、回転もしていました。シュールな演出も彼らの舞台の魅力かもしれません。

個性あふれるソロコーナーから5人の結束を感じさせるパートへ

一人ずつのソロコーナーでは、それぞれのクリエイティビティが炸裂。「Crazy about you」では橋本良亮が、ジュニアと一緒にヒップホップ系のキレの良いダンスを披露。激しく踊るときは髪を後ろで一つ結びにしていました。ダンスが決まって最後、いつもはクールな橋本良亮が会心の笑顔を見せていたのが印象的でした。五関晃一のソロは、死神みたいなフードの男性2人に囲まれて毛皮姿で椅子に座る、というゴシック感漂う世界観でした。戸塚祥太のソロは、椅子を並べてジュニアと一緒に座って踊りながら上着や長いパンツを脱ぎ捨て、タンクトップと短パンに白靴下で激しく踊る、という独創的なパフォーマンス。関節の可動域の広さを感じさせます。頭に巻いていたバンダナも取って投げてしまいましたが、巻いている時とのギャップで、乱れ気味の髪がセクシーでかっこよく見えました。
終盤では、5人の友情や結束力を感じさせる「頑張れ、友よ!」「また出会える日まで」などが歌われていて、淋しいけれどポジティブな感情が引き出されます。「たまには悩んでもいい」「歩いていこう」など、前向きなメッセージが多いですが、この一年は彼らも自身の楽曲に励まされていたのかもしれない、と想像。

5人それぞれのコメントに感動させられるエンディング

河合郁人が脱退することもあり、最後の一人ずつのコメントは感動を呼ぶ内容でした。一部抜粋すると……「郁人がキラキラしてるところ、5人がキラキラしてるところを見せたくてこのような形になりました」(橋本良亮)。「以前シアタークリエに立たせていただいた時の感覚とすごく似ています。これって初心を忘れるなってメッセージなのかなって」(塚田僚一)。「『FINAL FANTASY X』をプレイしていたら、主人公のティーダが『俺たちの物語を進めよう』って総括していて。本当そうだなって思って」(五関晃一)。「愛しさとか,感謝とかの感情がわいて出てきます」「4人になると体の半分持って行かれる感じで、3.5人になってるかもしれません」(戸塚祥太)。「メンバーと目が合うと、悲しいっていうより楽しいっていう気持ちになって、これがさみしい気持ちになっていくのかなと思います」(河合郁人)。
こんなふうに毎回、公演の最後にエモいコメントをしていくのでしょうか。毎日、脱退のことを言われて、いつか河合郁人の涙腺が緩む時も来そうです。最後はお客さんも含めて「俺たちとみんなで!」「A.B.C-Z!!」と叫んで、金色のテープが舞う中、舞台は締めくくられました。帝国劇場の壁に、空間に、A.B.C-Zの名前が永遠に記憶されることでしょう。

辛酸なめ子
イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は『女子校礼賛』(中公新書ラクレ)、『電車のおじさん』(小学館)、『新・人間関係のルール』『大人のマナー術』(光文社新書)など。