更年期の【めまい】をラクにする方法は?命に関わる病気が潜んでいる場合も

最近めまいが頻繁に起こる……。このような悩みを抱えていませんか?めまいは更年期の症状としてよく知られていますが、実は別の病気が隠れているサインの場合もあるため注意が必要です。そこで今回は考えられる原因や受診の目安、更年期の症状としてめまいが起こっている場合の対処法についてご紹介します。

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1.めまいの原因って?

めまいの原因は様々ですが、特に更年期の女性の場合、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌が減少することによる自律神経の乱れや、老化、ストレスなどからめまいが起こりやすくなります。
一方で、めまいは耳や脳の病気が原因で起こっている場合もあるため注意が必要です。以下では耳からくるめまい、脳からくるめまいの特徴を解説します。

①耳からくるめまい

耳からくるめまいは体の平衡感覚をつかさどる内耳の障害が主な原因です。下記のような症状がある場合は耳からくるめまいの可能性が高いでしょう。

●ぐるぐる回るようなめまい
●頭を動かしたときの激しいめまい
●耳鳴り
●難聴
●耳が詰まったような感覚(耳閉感)

考えられる疾患には、メニエール病、前庭神経炎、良性発作性頭位めまい症などがあげられます。なかでも良性発作性頭位めまい症は、内耳の耳石器という部位にあった炭酸カルシウムの結晶「耳石」が移動することが原因であり、カルシウム代謝に関わるエストロゲンの分泌が減少する更年期に起こりやすいといわれています。

②脳からくるめまい

脳からくるめまいは脳幹や小脳に障害が起きることでめまいが生じます。代表的な疾患は、脳腫瘍や脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血など)です。脳からくるめまいの症状には下記のような特徴があります。

●ふわふわする浮動性のめまい
●ぐらぐら揺れているようなめまい
●ふらつき

ただし浮動性のめまいには、体に異常がなく原因が特定できないPPPD (持続性知覚性姿勢誘発めまい)もあります。

2.めまいの原因を見極めるには病院で相談を

めまいは症状や原因が様々で、自己判断で見極めるのは難しいでしょう。なかには脳卒中のように緊急性が高い場合もあるため、めまいが起きたら病院で相談することが大切です。
特に脳からくるめまいの特徴に加え、「立っていられない」「まっすぐ歩けない」「しゃべりにくい」などの症状が出たときは、夜間や休日に関わらずすぐに受診しましょう。
めまいの症状で受診する場合、耳からくるめまいは耳鼻咽喉科や頭頸部外科、脳からくるめまいは脳神経外科や脳神経内科が向いています。症状の程度に関わらず、少しでも不安があるならまずは病院で相談しましょう。

3.更年期のめまいの対処法

病院を受診しても異常が見つからなかった場合、更年期症状のひとつとしてめまいが起きている可能性があります。以下では、その場合の対処法をご紹介します。

①ホルモン補充療法

病気の可能性がないのに、日常生活に支障が出るような強いめまいには、ホルモン補充療法(HRT)を検討してみましょう。減少したエストロゲンを補うことによって、更年期症状として起こるめまいを緩和する効果が期待できます。
ただしホルモン補充療法の副作用として、軽度の不正出血や乳房の張りや痛み、吐き気、頭痛などが生じる場合があります。また、高齢や肥満、高血圧の人は、静脈血栓塞栓症や脳卒中のリスクが増加する可能性があるため注意が必要です。ホルモン補充療法は乳がんリスクへの影響は小さいと考えられていますが、治療中は定期的な乳がん検診もしたほうがいいでしょう。

②生活習慣の見直し

規則正しい生活は、自律神経のバランスを整え、めまいを起こしにくい状態へと導きます。具体的には「毎日6〜7時間前後の睡眠時間をとる」「主食、主菜(肉、魚、卵)、副菜(野菜、海藻)を揃えたバランスのいい食事を意識する」「週合計で60分ほど、息がはずんで汗をかく程度の運動をする」などです。
一度にすべて始めるのは大変なので、できる範囲で少しずつ日々の生活に取り入れてみましょう。

③ストレスケア

ストレスは自律神経の乱れや内耳機能の異常を引き起こし、めまいの原因になることがあります。
ストレスケアには、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンを増やすために乳製品や大豆製品を食べたり、趣味に没頭してストレスを発散させたりするのがおすすめです。また、前述した生活習慣の改善もストレスケアに役立ちます。

④ツボを刺激する

血液循環の促進や自律神経の調整に役立つといわれるツボを刺激すると、めまいが改善されることがあります。

<めまいが気になる人におすすめのツボ>

・頭竅陰(あたまきょういん)
耳の裏側の真ん中から指1本分ほど後ろに下がった骨の上にあるくぼみの部分のツボ。血液循環機能の回復を助け、めまいや立ちくらみの改善に働きかけます。

・風池(ふうち)
後頭部の髪の生え際で、首中央のへこみから左右外側にたどると、もう一度へこむ部分にあるツボ。自律神経症状として起きやすいめまいや頭痛、耳鳴りなどに効果が期待できます。

ツボの押し方は、5秒かけて鼻から息を吸いながら親指で押し、その後5秒かけて指の力を抜く間に口から息を吐きだします。お腹に空気をため、吐き出すイメージで行うのがポイントです。

⑤漢方薬を飲む

めまいが起きにくい体質を目指せる漢方薬もおすすめです。漢方薬の中には医薬品としてめまいに効果が認められているものがあり、耳鼻科や婦人科でも処方されています。
めまい対策には、「ホルモンバランスの乱れを整える」「血流を良くして脳や耳に酸素や栄養を届けて三半規管の機能を回復する」「水分の循環を良くして内耳の機能を改善する」「自律神経を調整してストレスが原因のめまいを改善する」などの作用をもつ漢方薬で、根本改善を目指しましょう。
漢方薬は自分の症状や体質に合うものを毎日飲むだけなので、生活習慣を急に変えるのは大変という人でも気軽に続けられるのがメリットです。また心と体のバランスが整うことで、めまい以外の更年期症状の同時改善も期待できます。

<めまいが気になる人におすすめの漢方薬>

・半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
低下した胃腸機能を高め、めまいや頭痛を改善するのに用いられます。胃腸が弱く下肢が冷える人の、めまいや頭痛、頭重、立ちくらみなどに効果があります。

・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
体力がなく、神経質な人に。のぼせや動悸がある人のめまいやふらつき、耳鳴り、頭痛などに用いられます。

ただし漢方薬を選ぶ際、その人の状態や体質に合っているかが重要です。合っていない場合、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。どの漢方薬が自分に向いているのかを見極めるためには漢方に精通した医師や薬剤師などに相談しましょう。

教えてくれたのは…あんしん漢方 ライター 円山真由佳さん

医薬品登録販売者。ドラッグストアでの医薬品・化粧品販売を経て、市販薬の使い分け方を広めるべく執筆・情報発信を行う。美容薬学・アロマテラピーの資格を保持し、インナーケアや女性の不調ケアにも精通している。表面的な悩みの奥にある潜在的な悩みをくみとり、対症療法ではなく根本改善を目的としたアドバイスを得意とする。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でもサポートを行っている。

編集/根橋明日美 写真/PIXTA

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