古田新太さん(58)家族に対しての自分の役目と、いま役者としてやりたいこととは
幅広い表現力と唯一無二の存在感でドラマや映画などで活躍している古田新太さん。ド派手なエンターテインメント作品で大人気の劇団☆新感線の看板俳優でもある“怪優”が、劇団公演『バサラオ』で生田斗真さん、中村倫也さんらと共演します。インタビュー後編では、その見どころや、古田さんにとってのご家族の存在、今後の展望などについてお届けします。
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監督の注文にはとにかく応える古田新太さん(58)、「俳優として『できません』なんて恥ずかしくて言えない」
登場人物が全員ワガママなんです
7月に幕を開ける新作舞台『バサラオ』(脚本:中島かずき 演出:いのうえひでのり)は、ヒノモトと呼ばれる島国を舞台にした時代活劇。生田斗真さんと中村倫也さんを主軸に、歌と踊りとアクション満載のダークスペクタクルが繰り広げられます。
「登場人物が全員ワガママなんです。それぞれ違う目論見があって我を通そうとするから、そこでぶつかり合う。中でも、おのれの美しさを武器に天下を取ろうというのが、斗真が演じるヒュウガという男で、倫也はその相棒の役。信頼している仲のいい2人が芯を務めてくれるので、何も心配していません。今回、女子はみんな強い役柄を演じるから、同じくゲストのりょうちゃんとなぁちゃん(西野七瀬)は大変だと思うけど、うちの劇団の芝居に出るのは初めてじゃないですから。いのうえさんや中島さんが求めるニュアンスもわかっているし、うちの劇団の敷居の低さもすでに知っているので、安心して参加できていると思いますね。ちなみに、オイラがやるのは、幕府と敵対して島に流されていたんだけど、京に戻るゴノミカド。登場人物の中ではいちばん裏表がない、わかりやすいワガママさんです」
出演者は総勢39名。様々な欲望と思惑が入り乱れる、壮大なピカレスク譚になりそうです。
「舞台袖は大変なことになりますよ。限られた人数で国盗りの大戦をしなきゃいけないから、アンサンブルやダンサー、アクションチームは、やられて袖に引っ込んだら、すぐに着替えて今度は敵になって出る……みたいなことになって。いのうえさんも中島さんも袖を全然見てないから、平気でそういうシーンを作るんです。ちゃんと交通整理して、怪我がないようにしないと。
そもそも、うちの劇団は、小劇場で芝居を打ってた頃から、無茶なことばっかり。代々木競技場をローラースケートでぐるぐる走り回るミュージカルが話題になった時は、自分たちもそれをやろうとしましたからね。こっちは狭い劇場だったから、とてもじゃないけど曲がりきれなくて、みんなバンバン客席に落ちてました(笑)」
無茶振りに、なんとかお応えしたい
いまや大劇場を連日大入りにする人気劇団として知られていますが、無茶なところは変わらないといいます。
「小屋(劇場)は随分大きくなったけど、予算は潤沢にあるわけじゃないですから。毎回ギリギリセーフなところで必死にやってるのに、いのうえさんと中島さんは相変わらず『この間できたんだから、やれるよ』というスタンスなんです(笑)。その無茶振りに、スタッフも含めてなんとかお応えするっていうのが、うちの劇団の味であり、強みでしょうね。解散もせずに劇団を40年以上やっているのは、たぶん、いのうえさんと中島さんが『まだできるはず』『まだやりたいこと、できてないことがたくさんあるよ』って、夢みたいなことを思っているから。スタッフもキャストも、それになんとかお応えしたいと思っているから、なかなか解散できないんじゃないかな(笑)。いちばん古い劇団員のオイラも、そう思ってますよ。まあ、アクションはもう勘弁してほしいですけどね。今回も稽古しながら、自分の殺陣を極力減らしていくつもりです(笑)」
今年3月には、“劇団☆新感線の看板俳優として約40年もの活躍を続け、外部の舞台や映画、テレビでも多様な役を演じている得難い俳優である”として、松尾芸能賞 優秀賞を受賞しました。
「嬉しかったですよ。オイラは、劇団でいのうえさんに『そこの動き、野口五郎で』みたいな演出をされ続け、自分なりの野口五郎をやってみたりするうちに、それが蜷川幸雄さんであろうが、野田秀樹さんであろうが、“演出家に『こんな風にやってみて』と言われたことをやって、演出家が笑ったら自分の勝ちだ”と思うようになった俳優。そうするのが俳優だと思って、ずっとやってきた人間が、こういう形で褒めてもらえたんですから(笑)」
家族に対する仕事は、一応終わったかなと
「家族に対する仕事は、一応もう全て終わったぞと思ってます。借金はないし、ローンもないし、娘も30歳。もしも、オイラが死んでも、家を売っ払えば、嫁さん一人ぐらいは暮らしていけるだろう、オイラの役目はもう終わったな、っていう。あとは、自分が好きな下ネタ下品ミュージカルを作り上げていくだけです(笑)。オイラが劇団を辞めないのは、それを作るためなんで。一緒に作ってくれそうな仲間はたくさんできましたけど、インチキな音楽にインチキな歌詞を乗っけて、カッコイイ踊りとアクションを見せる、しかも、動けて信頼できる若手をセンターに呼んで、自分たちはサブを務めるっていうような公演をやってるチームは、新感線のほかにないですから。やっぱり自分がやりたい下ネタ下品ミュージカルを作れるいちばんの場所は、ここなんだろうなと」
来年には還暦を迎えるという古田さん。最後に今後の展望を伺いました。
「行きつけの飲み屋に、飲み友達のおもろいオッサンたちがいるんですよ。ドラマ『不適切にもほどがある!』を見て、『あの程度で不適切だと言われたら、俺たちどうなっちゃうんだよ』って言ってるくらい、不適切な発言が得意なオッサンたちが(笑)。その中に、オイラよりも飲みまくっているのに、いまだに現役で介護の仕事をしてる68歳の先輩がいて、そういう先輩を見ていると、自分もまだ行けるんじゃないかなと思ったりします。なので、自分が『まだやれるな』と思っているうちは芝居を続けたいですね。斗真や倫也みたいな後輩に大変なところは任せながら(笑)。あとは、アニメソングでヒット曲を出したいかな。というか、Creepy Nutsになりたい(笑)。できれば世界で1位を取りたい(笑)」
公開情報
2024年 劇団☆新感線44周年興行・夏秋公演
いのうえ歌舞伎『バサラオ』
幕府と帝が対立する島国ヒノモトの“狂い桜”の下で、手を結んだヒュウガとカイリ。ヒュウガの美貌を武器に、二人は天下を取ろうと目論み……。
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:生田斗真、中村倫也/西野七瀬、粟根まこと/りょう/古田新太 ほか
7月7日~8月2日:福岡・博多座
8月12日~9月26日:東京・明治座
10月5日~17日:大阪・フェスティバルホール
http://www.vi-shinkansen.co.jp/basarao/
【プロフィール】
ふるたあらた/1965年、兵庫県出身。大阪芸術大学舞台芸術学科在学中の1984年より劇団☆新感線公演に出演。いつの間にか劇団員、しかも看板俳優となる一方、関西を中心に深夜のバラエティ番組やラジオ番組でも人気を博す。外部の舞台公演や、映画、ドラマなどでも活躍し、近年では2022年に『空白』で日本映画批評家大賞およびヨコハマ映画祭の主演男優賞、2024年に松尾芸能賞優秀賞を受賞。ドラマ『鬼平犯科帳 血頭の丹兵衛』が2024年7月6日に時代劇専門チャンネル他で配信される。
撮影/加治屋圭斗 ヘア・メーク/田中菜月 スタイリスト/渡邉圭祐 取材・文/岡﨑 香 衣裳協力/カーディガン¥28,600、パンツ¥22,000/共にパゴン(問パゴン本店☎ 075-322-2391)
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