元バレーボール日本代表キャプテン木村沙織さん「リーダーだってみんなに頼っていい」

The post 元バレーボール日本代表キャプテン木村沙織さん「リーダーだってみんなに頼っていい」 appeared first on CLASSY.[クラッシィ].

堀田茜が「30代になってなんだか気になる…」と感じるタイムリーな話題を、今会いたい識者に直接聞きに行く連載30回目。今回は、「リーダーシップ」について元バレーボール女子日本代表キャプテンの木村沙織さんにお聞きしました。

次女だからか、自分から引っ張ったりまとめるのが難しい…(茜)

【今月の茜のモヤモヤ案件】
30歳過ぎてからの集団行動って学生の頃より難しい!自分の成果を上げ、先輩や後輩にも気配りをしながら、いいチームになるように全体を俯瞰で見て、自分の役割も考えて、とやることがいっぱいで。どうすればうまく立ち回りできるの?

〈今月話し合いたいこと〉
集団行動のとき、みんなを引っ張るのが苦手。元々の気質だから仕方ない?

堀田:学生時代、学校でバレーが盛り上がっていて、いつも試合をテレビで見ていたのでお会いできてすごくうれしいです。グラチャンバレーとか懐かしい…。
木村:えー!そう言ってもらえて私もうれしいです、ありがとうございます。
堀田:バレーボールで活躍されて、長い間チームの中にいて、キャプテンも務めて、チームをうまく運ぶためにはどうしたらいいかをずっと考えていらっしゃったのかなと思います。業界は違いますが、私もドラマや映画、バラエティ番組など、どの現場も大人数なので、常にチームワークが必要とされます。その中で、自分がどう立ち回ればいいか人間関係で悩むことが多くて。CLASSY.読者も、仕事で初めてチームリーダーを任されたりすることがある年代。木村さんはどんなことを考えて人間関係をまとめてきましたか?

同じ目標の共有が一番大事。リーダーだってみんなに頼っていい

木村:まずはみんなで同じ目標を目指すことを一番にしてきました。うまくやっていこう…とかはあまり考えたことがないですね。バレーボールが好きで集まったメンバーだから、メダルを取りたいとか、日本一になりたいとか、目指す方向は同じ。最初にメンバーが集まったときは、目標への温度感が違ったり、経験値の違いがあったり、年齢差があったりとかバラつきはありますけどね。でも目標の共有をして、みんなの温度を引き上げていくうちにそんなバラつきもなくなっていきました。

堀田:私の仕事も、いい作品にしよう、おもしろい番組にしようという気持ちで取り組んでいますし、いろんなタイプの人がいることも同じです。ただ自分自身が人に対して理想的なふるまいができているのか分からなくて、思い悩むことが多くて。たとえば自分が主演のドラマの現場だと、やっぱり私が場を盛り上げなくちゃと責任を感じるし、先輩や後輩がたくさんいる場だと、私はどう立ち回ればみんなが居心地いいかなと考え込んだり。でも私、次女だからか、何かをまとめるリーダーの立場がすごく苦手で…。生まれ持った性格で、みんなをまとめられる人っていますよね。気を配れて、引っ張っていくのが上手で、明るくて話も面白くて、頼れる人。私もそうなりたい!…と憧れるのですが、性格的にそうなれないことが悔しくて。
木村:憧れますよね。私も全然キャプテン向きの性格ではないんです。堀田さんと同じように引っ張るのが苦手。だから、そういうことが得意な人に頼ってました。キャプテンになった当初は張り切ってとりまとめようとしたんですけどね、空回りしちゃって…。空回りして、本来の自分を見失って、バレーもうまくいかなくなって、なんでバレーボールやってるんだっけ…と考えるまで落ち込みました。でも苦手なことは苦手だと自分で認めて、みんなに相談するやり方に変えてみたんです。それまでは人に頼ることが苦手で。
堀田:私も頼るのがすごく苦手です…。それでうまくいきました?
木村:結束力が高まりました。任せたり頼ることによって絆が生まれるんですよね。お願いするって相手を信用することだし、任された側も責任を持つから成長するし、その結果チームの結束が固くなる。あぁ、全部自分でやろうとしなくて良かったんだって気づいてからはラクになりましたよ。
堀田:リーダーの役割=完璧な司令塔でいなきゃ、と思い込んでしまって、そんなふうに隙を見せてもいいのか、と安心しました。たしかに頼られたら誰だってうれしいですよね。ご自身でチームメイトの動きを調整したり指示されたり、って大変じゃないですか?
木村:全員と平等にコミュニケーションを取って全員のことを把握するのは無理なので、頼れる人を3人作って、その人たちからみんなの状況を確認していました。プレー面でも同じで、たとえば「私あの選手のサーブが苦手だからフォローお願いしていい?」と頼ると、フォローにまわってくれるし、それが1点に繋がったときにはまた絆が生まれるんですよ。頼ることの良さに、もっと早く気づきたかったと今でもよく思います。
堀田:そういう積み重ねでチーム全体の士気が上がっていきますよね。私もそうなりたい…。ですが年を重ねるほどに「私が頼っていいのかな」とか余計なことを考えて、完璧主義な性格も相まってどんどんコミュニケーションが下手になっていて。
木村:私は「そういう性格だからもうしょうがない」と割り切っちゃってました。堀田さんが言うように、私も甘えるのが上手ではないので、誰かに頼るくらいなら自分でやりたいし、それやりますよと声をかけられても「自分でできるから大丈夫」と断るタイプ。「大丈夫」が口癖だったくらい。
堀田:同じです(笑)。
木村:でも人にお願いしてみると、お願いされる側もうれしそうじゃないですか?リーダー気質の人にリスペクトはあるし今でもうらやましいですけど、自分なりのリーダー像、やり方があっていいから、堀田さんらしくていいと思います。

同じ目標を目指すことを伝えられればそれだけでまとまるはず(沙織)

いいチームは控えの選手たちも気持ちの温度が同じ

堀田:木村さんが思う、いいチームってどんなチームですか?
木村:やっぱり最初の話と同じで、チーム全体で同じで目標を共有できていると感じられること。いいチームは、試合に出ている選手も、出ていない控えの選手やスタッフたちも、温度感が同じです。チームによっては、あきらかに試合に出ることを諦めちゃってる選手がいたりするんですね。私もずっと出させてもらってた側ですけど、スタメンを外されたときはふてくされちゃうことが多かった。でもピンチのときに交代する選手のほうが、実はメンタル面でも技術面でも求められることが多くて。試合に出ていない側の努力もチームのモチベーションに関わってくるんだと出ている側も気づかなきゃいけない。チームの良し悪しはそこが一番分かりやすいです。
堀田:本当にそうですね。私の仕事でも、誰が主役で誰が裏方でとかそんなの関係なく、いい作品にしたい!と全員が同じ方を向いているときは現場が明るいし、自然と気持ちが熱くなります。その結果いい作品になると、この上ない喜びがあるんですよ。そういう瞬間がこれから先にもっと増えればいいなと思って。自分の立ち回りがチームに影響するならもっとうまくやりたいと悩んでの今回のお話でした。自分が都度目標を確認して、気持ちを高めて、それに届くようにまわりに声をかけたりすることも大事ですよね。常に同じモチベーションを維持することも難しいと感じてしまうのですが、士気が下がってしまったときはどうしてましたか?
木村:そのときも誰かに頼っちゃいます。「今日はなかなかやる気スイッチが見当たりません、だからフォローお願いします」って(笑)。そうやって頼ってるうちに、気づいたらいつもスイッチが入っていました。練習行きたくないなー…と思っても、誰かに頼れば自分の気持ちも引き上げてもらえる。それがチームワークのいいところじゃないですか。個人競技だったら私は甘えていく一方だったかもしれません。私はみんなに支えてもらえたから、バレーボール選手でいられました。
堀田:そう言い切れるってすごく素敵ですね。なんだか安心できました。みんなに頼りながら、という考えが今の時代にも合ってるんだろうなって。なかなか人に甘えるのが苦手なんですけど、私もそうなれるように、がんばります。

対談したのは…

木村沙織
きむらさおり●1986年8月19日生まれ、東京都出身。17歳で日本代表入りしエースアタッカーとして活躍。五輪4大会連続出場を果たし、ロンドン五輪では銅メダルを獲得。リオ五輪ではキャプテンを務めた。2017年に現役を引退。大会のアンバサダーを務めるなど現在もバレーボール界に携わる。メディア出演多数。2016年に結婚、一児の母。

堀田茜
ほったあかね●モデル、俳優。1992年10月26日生まれ、東京都出身。CLASSY.をはじめ多くの女性ファッション誌、ドラマに出演。「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ)レギュラー。『ENENOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』(J-WAVE)ナビゲーター。土ドラ『浅草ラスボスおばあちゃん』(東海テレビ・フジテレビ系列)、映画『この夏の星を見る』(公開中)に出演。2024年4月に結婚。

[茜]ジレ¥43,000スカート¥35,000(ともにティーチ)Tシャツ¥9,680(スローン/ザ ショップ スローン 新静岡セノバ店)ネックレス¥13,200(アビステ)※木村沙織さんの衣装はすべて本人私物です

撮影/イ・ガンヒョン スタイリング/大野由加里[堀田さん分] ヘアメイク/TONOE 取材/野田春香 編集/小林麻衣子 再構成/Bravoworks,Inc.
※CLASSY.2025年10月号「堀田茜のほったらかしにしたらアカン!」より。
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。