【発達障害と向き合う③】さかもと未明さん(59歳)「出来ないのは、あなたのせいではない」に涙が溢れた

社会的な関心の高まりによって、診断される人の数が年々増加の一途をたどっている〝発達障害〟。子どもの頃に診断された人、大人になってから気づいた人など多様なケースがある中、どんな生きづらさを抱えながら、どのように向き合ってきたのか……特性とともに歩んできた、それぞれの軌跡を伺いました。

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さかもと未明さん 59歳・東京都在住
アーティスト、漫画家、歌手、作家

診断を受け、抱えてきた生き辛さは、
私のせいでなく発達障害のせいだと
わかって楽になれました

父はアルコール依存症でDV、母には「あなたは普通の子どもと違う」と疎まれたと言う未明さん。勉強はできましたが、学校ではいじめられ、不登校や拒食症、リストカットも。抑うつ状態と診断され、投薬も受けましたが、改善しませんでした。

卒業後、就職して家を出ましたが……

「事務機器の音が辛くて出社できず、クビに」

救いの手を差し伸べてくれた中学の同級生と結婚し、雑誌に漫画の投稿を続け、漫画家デビューを果たしました。ところが、子どもがほしい夫と意見が合わず、離婚し、上京。やがてレディコミの女王と注目されました。その後、歴史漫画や政治漫画もヒットし、テレビのコメンテーターとしても活躍しました。

「忙しい最中の、’08年に膠原病を発症。病状が悪化してペンが持てない状態になり、余命5年と宣告を受けました。寝込んでいたとき、知人が来て、本の新聞広告を見せてくれたんです。そこには、〝片付けられない、約束が守れない、仕事中毒、依存症、あなたは発達障害かも?〟と書かれていて。全てが私に合致していて驚きました。著者の星野仁彦先生に会いたいと、取材をお願いしました。先生の顔を見るなり、私は、取材そっちのけで、自分のこれまでを一気に先生に話していました。すると、先生は、『あなたはADHD、アスペルガーの疑いがあり、親や友達とうまくいかなかったのも、部屋が片付かないのも発達障害のせいで、あなたのせいではない』と言ってくれたのです。その言葉に涙が溢れました」

後日、現在のご主人に付き添われ、検査・診断を受け、投薬を開始。

「半信半疑でしたが、薬を飲むと気持ちも体調も改善しました。そうして発達障害を勉強し、理解すると、治療も人生も少しずつうまくいくようになっていきました。例えば、かつて友人が離れていったのは、共感を求められているのに理詰めで答えて不快にさせたと気づき、気をつけるように。一方で、いじめも不登校も病気のせいと思うと、気持ちが軽くなりました。現在、子どもでも診断を受けられるようになったのは、いいことだと思います。ご両親は、ポジティブに受け止め、正しく知り、どうしたらいいかを一緒に考えてあげてほしいです。人と同じでなくていい。不得意なことを無理強いせず、興味のあることをやらせてあげてほしい。親が可能性を信じてあげることが大切だと思うのです」

<編集後記>ご主人とのなれそめも素敵。書ききれないのが残念です

ご主人と出会ったころ、ご主人の前妻に不貞で訴えられてしまいました。当時、膠原病で寝たきりで、不貞の事実はありませんでしたが、ご主人は裁判を終わらせるために前妻と離婚。家、財産を放棄し、その後、未明さんと再婚しました。常に理解し寄り添ってくれる一番の味方です。その他エピソードいっぱいで、書ききれないのが残念。(ライター 秋元恵美)

撮影/吉澤健太 ヘア・メーク/田篭道子 取材/秋元恵美 ※情報は2025年11月号掲載時のものです。※着用のネックレスは私物です。ブティックへの問い合わせはご遠慮ください。

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