腰から足にかけて痛む…それ「坐骨神経痛」かも? 自宅でできるケア5選【薬剤師監修】
長時間のデスクワークや立ち仕事をしているとき、腰から足にかけて痛みを感じることはありませんか? その痛みは「坐骨神経痛」かもしれません。放っておくと痛みが慢性化してしまうこともあるため、早めの対策が重要です。坐骨神経痛の原因と、今日からできるセルフケア方法をご紹介します。
◆あわせて読みたい
1.坐骨神経痛って?
坐骨神経痛は、病名ではなく、お尻から太もも、ふくらはぎ、足先へと伸びる「坐骨神経」に沿って痛みやしびれが生じる痛みの総称です。特に、お尻の奥や太ももの裏、ふくらはぎの外側に痛みを感じます。
痛みの種類は人によって異なり、「ズキズキするような痛み」「電気が走るような鋭い痛み」「足のしびれや感覚の鈍さ」などの症状が現れるのが特徴です。立ち上がるときや長時間座ったときに強く感じることが多く、悪化すると歩くのもつらくなることがあります。
2.坐骨神経痛の原因
坐骨神経痛を引き起こす要因はさまざまです。代表的な原因を2つ紹介します。
①病気の影響
坐骨神経痛の背景には、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など、腰に関わる病気が潜んでいる可能性があります。
椎間板ヘルニアでは、背骨の間にあるクッションのような椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで痛みを生じます。腰部脊柱管狭窄症は、背骨にある神経が通るトンネル(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫されることでしびれや痛みを感じるようになる病気です。
また、糖尿病による神経障害や、子宮内膜症など骨盤周辺の病気が神経に影響することもあります。これらの病気が疑われる場合は、整形外科や婦人科の受診が必要です。
②血行不良
病気ではなく、生活習慣によって血行不良が起きていることが原因のケースも少なくありません。特にデスクワーク中心の生活では、同じ姿勢を長時間続けることでお尻や腰の筋肉が硬くなり、血流が悪化します。この血行不良によって痛みを引き起こす疼痛物質のブラジキニンやセロトニンなどが筋肉にたまりやすくなり、痛みの原因となるのです。
また、冷えも大きな要因の一つ。冷えると筋肉がこわばり、血流が滞りやすくなります。特に、冬場や冷房の効いたオフィスでは、知らず知らずのうちに坐骨神経への負担が増し、痛みが出やすくなります。
3.坐骨神経痛の対策方法
坐骨神経痛を和らげるためには、姿勢や体の使い方を見直すことが重要です。ここでは、無理なく取り入れられるセルフケアを紹介します。
①正しい姿勢を保つ
坐骨神経痛対策でまず意識したいのが「姿勢」です。姿勢が悪いと腰へ余計な負担がかかり、坐骨神経痛につながりやすくなります。姿勢を整えることで神経への圧迫を防ぎ、痛みの軽減が期待できます。
背筋を伸ばし、天井から糸でつり下げられているような感覚で座りましょう。これにより、自然と骨盤が立ち、腰への負担が軽減されます。また、デスクワーク中は1時間に1回は立ち上がって軽く体を動かすことで、血流を促進できます。
②腰への負担を軽減する
重い荷物を持ち上げたり、中腰の姿勢を長く続けたりすることは、腰に負担をかけ坐骨神経痛の悪化につながる要因の一つです。重い荷物を持つ際は、膝をのばしたままで持ち上げるのではなく、膝を曲げて脚の力を使うようにすると、腰の負担を軽減できます。
また、体重の増加も腰に負担をかけます。適度な運動や食生活の見直しを行い、体重が増えすぎないようにしましょう。
③適度にストレッチをする
ストレッチは筋肉の柔軟性を高めて血流を改善する効果が期待できます。朝や入浴後など体が温まったタイミングで行うのが効果的です。
おすすめは、お尻の筋肉を伸ばすストレッチ。やり方は以下のとおりです。
<お尻の筋肉を伸ばすストレッチ>
(1) 床に仰向けに寝転がる
(2) 片脚の膝を抱えて、脚の付け根を体の内側にゆっくり曲げる
(3) 反対側も同様に行う
脚の付け根からお尻にかけてじんわり伸びる感覚を意識しながら、無理のない範囲で10秒程度キープしましょう。ただし、やりすぎは逆効果になるため、痛みが出たらすぐに中止することが大切です。
④冷えを防ぐ
冷えは血流を悪化させ、坐骨神経痛を長引かせる原因になります。日常生活の中で腰や下半身を冷やさない工夫をしましょう。
例えば、オフィスでは膝掛けを活用し、外出時は腰周りを温めるインナーやレッグウォーマーを取り入れるのがおすすめ。朝夕と日中の気温差が大きい季節には、カーディガンや薄手のコートを持ち歩くなど、体温調整しやすい服装を意識してみてください。
⑤漢方薬を活用する
体の内側からアプローチしたい場合は、漢方薬を取り入れるのも一つの方法です。漢方薬は自然由来の生薬からできており、痛みの根本原因へアプローチして症状を改善します。
坐骨神経痛には「血流を促進して神経の痛みやしびれを改善する」「鎮痛作用で痛みを和らげる」「体を温めて筋肉を緩める」などの働きがある漢方薬を選びましょう。
<坐骨神経痛におすすめの漢方薬>
・疎経活血湯(そけいかっけつとう)
血行を促進して、痛みやしびれを改善する漢方薬です。関節痛や神経痛、腰痛、筋肉痛などに用いられます。
・芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
体の栄養を補い、筋肉の緊張を和らげることで、急な筋肉の痙攣を鎮めて筋肉の痛みなどを改善する漢方薬です。こむら返りやぎっくり腰などに用いられます。
体質や症状によって合う漢方薬は異なるため、薬剤師や医師に相談しながら選ぶことが大切です。自分に合う漢方薬を見つけて、セルフケアの一つとして取り入れてみましょう。
<参考文献>
※社会福祉法人恩賜財団済生会「坐骨神経痛」
※社団法人日本整形外科学会「坐骨神経痛」
※社会福祉法人恩賜財団済生会「冬の神経痛に注意! 寒い時期の坐骨神経痛や肋間神経痛を予防する」
薬剤師・元漢方薬生薬認定薬剤師 / 修士(薬学) / 博士(理学)。神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
編集/根橋明日美
◆こちらの記事もおすすめ