窪塚洋介さん、似た者同士の妻との関係「どうせ、わかってもらえないというストレスがない」
かつては、毎回満塁ホームランを打たなければと思うくらい完璧主義だった窪塚洋介さん。落下事故や家族との経験を経て、子どもと向き会うこと、似た人と共に過ごすことで今を生きることの大切さを、日々実感しているといいます。そんな窪塚さんの人生を父親として、そして1人の男性として、振り返っていただきました。
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毎回、満塁ホームランを打たなければと思っていた完璧主義な人間でした
昔の俺は、かなり完璧主義でした。失敗したらダメだと思っていたし、ホームランを打つなら満塁じゃなきゃ意味がない、みたいな考え方をしていて。感覚で生きているというより、左脳的でロジカル。今思えば、かなり力が入っていたと思います。そんな自分じゃダメだと思った時に、全然逆の性格だった前の妻に惹かれました。彼女は100%右脳の人。そこで夫婦としてのバランスを取っていたんだと思います。
「今を生きる」って言葉では言えるんですが、実際は未来の不安に気が散って、今を生きられていなかったのは俺のほうで。元妻は、明日死んでもいいと思えるくらい、ちゃんと“今”を生きているような人でした。子どもとの関係もそうで、俺は「友達みたいな関係でいたい」って言葉にはするけれど、それをどうしたらいいかわからない。一方で元妻は、言葉にしなくても、もう子どもとそういう関係を築いていて。嘘をついているわけではないけれど、俺は言葉だけで実行できない自分が歯痒くて、葛藤もありましたね。
今振り返ると、家族の前で弱音を吐くこともできていなかったと思います。弱音になるくらいなら悪態になっていましたね。泣く代わりに怒っていた、みたいなところがあって。元妻に当たってしまうこともありました。怒鳴ったり、ドアをバンと閉めたり。反省はたくさんあります。
振り返ると、やっぱり転落事故が大きな転機でした。あれは俺の人生のファンファーレだったなって。暗めですけどね(笑)。でも、あれがなかったら今の自分はいないと思います。そのときも「ほんまビックリしたわ、もうやめてやー」って、元妻は重く捉えていなくて。その軽さに救われた部分は確実にあったと思います。でも、あの時の悩みがあったから今があるとも思っていて。事故をきっかけに、俺から離れていく人もいました。でも、仲間や友達だと思っていた人は残ってくれて。転落事故も含めて、いわゆる黒歴史は全部、今につながっている、と。結果として、今が幸せなので後悔はしていません。
似た人と生きることで、わかってもらうための説明をしなくてよくなった
10代、20代の頃は、ないものねだりでした。自分にないものを持っている人に惹かれていたから、感覚が違ってぶつかることも多かったと思います。30代以降は、自分に似た人、見えている未来が近い人に惹かれるようになりました。今の妻はまさにそういう人です。僕が腸活にハマったら、だんだん興味を持ってくれて、「キッチンは任せて」って一緒に楽しんでくれる。子どもへの考え方や理屈も共有しやすいから、説明を省ける。これが本当に楽なんですよね。説明しないと伝わらない関係って、知らないうちにストレスが溜まっていく。そうなると、嬉しかったことも話さなくなる。「どうせわかってもらえないだろうな」って。似た者同士だと、喜びも苦しみも分かち合いやすくて。もう14、5年一緒にいますが、喧嘩もほとんどなく、自然と共有し合える関係です。もちろん我慢していることもあると思いますけどね(笑)。旅先の夜にお酒を飲みながら、ぽつぽつ話すくらいがちょうどいい。妻は子どもが生まれてから、ほとんどお酒を飲まなくなって、本当に人生を子どもに捧げてきた人。ここ3年くらいはサロンを始めたり、自分の人生にも目を向け始めたみたいですが、頭が上がらないですね。
最初から完璧にできるわけがない、こっちも初めての父親
父親になってみて思うのは、子どもが初めてなら、こっちも初めての父親だよってことなんです。最初から完璧にできるわけがないし、正解なんてたぶんどこにもない。だから一緒に成長していけたら、それでいいんじゃないかなって。正直、毎日向き合っていると「もうまたこれか……」って思う瞬間もあります。でも、ふと立ち止まって考えると、今日のこの時間も、明日にはもう同じ形では存在していない。いつか必ず最後の日は来るわけで、そう思うと“今”って、やっぱりかけがえがないんですよね。
父親としてできることは、抱きしめられるうちは、ちゃんと抱きしめる。公園に行ったなら、ちょっとしんどくても全力で遊ぶ。それだけでいいと思うんです。子どもを連れてきているのに、ずっとスマホを見ている大人を見ると、なんというか、心に冷たい風が吹くというか…少し寂しい気持ちになりますね。家族でレストランに来て、全員がスマホを触っている、ああいう家族にはなりたくないなって。料理が来るまでの時間に、ストローの袋に水を垂らして遊んだり、その場にあるもので時間を潰したり。後から振り返ると、ああいう何でもない時間こそが、一番大切だったなって思います。
変わらないために固まるんじゃなくて、流れながら変わっていけたらいいなって
来年も再来年も、この道の延長線上にいられたらいいなと思っています。10年前の自分に、「この先ゴルフと陶芸が欠かせないものになるよ」って言っても、たぶん信じなかったでしょうね。でも今は、どちらも生活の一部になっている。そういうふうに、無理して何かを始めるんじゃなくて、自然な流れで新しいものが増えていく人生って、悪くないなと思うんです。また10年後、今は想像もしていないことをやっていたとしても、それはそれで面白い。変わらないために固まるんじゃなくて、流れながら変わっていけたらいいなって。
幼い頃からずっと、世の中に直接役に立つことをやりたいという気持ちはありました。派手じゃなくてもいいから、誰かの生活や心にちゃんと触れるようなことを。今年は、そのために少しずつですが動き始めています。急がず、無理せず、でも止まらず。そんなふうに、この先も自分の人生を歩いていけたらいいですね。
『人生を”縁”で導く生存術』
著者:窪塚洋介
発行:NORTH VILLAGE/発売:サンクチュアリ出版
発売日:2026年3月5日(木)
定価:1,980円(税込)|四六判|208ページ
ISBN:978-4-86113-440-1
デビュー→転落→困窮→再起
窪塚洋介の30年を繋いだ、どんどん自由になる
【思考法】
●窪塚洋介墨画展『雲中白鶴』
会期:2026年1月24日~4月4日(11:00~17:00)
※休館日:月曜/第2・第4火曜日
場所:Gallery CRANE(兵庫県芦屋市大原町13-21 2F)
https://www.crane-ashiya.com/
窪塚洋介さん プロフィール
1979年5月7日生まれ。神奈川県横須賀市出身。1995年に俳優デビュー。2001年公開映画「GO 」で日本アカデミー賞新人賞と史上最年少で最優秀主演男優賞を受賞。2017年にマーティン・スコセッシ監督作『Silence -沈黙-』でハリウッドデビューを果たす。映画を中心に国内外問わず多数の話題作に出演しており、今後も待機作多数。舞台でも活躍するほか、音楽活動、モデル、執筆、陶芸や墨画の創作など多彩な才能を発揮。自身のYouTube番組やゴルフアパレルブランド、日本酒などのプロデュースにも注力している。2026年4月より『外道の歌 SEASON2』(DMM TV)配信予定。
撮影/佐藤俊斗 ヘア・メーク/佐藤修司(botanica make hair) 取材/小出真梨子 ※衣装は全てご本人の私服
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