山之内すず「スクールカースト圏外だった」嫉妬に苦しんだ“修行時代”
17歳で出演した恋愛リアリティー番組でブレイクし、TikTokやInstagramでの人気ぶりから“ティーンのカリスマ”と名高い、タレントでモデルの山之内すずさん。本誌連載中の新時代表現プロジェクト「1 PICTURE 1 STORY(以下、ワンピク)」vol.3作品に、インスパイアソング『あの子になりたい』の歌い手として参加し、自身初のデジタルシングルリリースも果たした。
人気ボカロP・音楽プロデューサーの40mPが手がけた同曲と、もとになった原案ストーリー『私たちの友情は永久不滅★』(bis5月号掲載)は、ともに“女のコ同士の嫉妬”をテーマに綴られた作品。今回は山之内さんが、“嫉妬の記憶”を明かします。
「寺田てらさんの原案イラストに描かれている4人の女の子のうち、白い髪の子は『何も求めていないのに、いろいろな人に縛られている』状態だそうです。私、学生時代はこの子みたいなタイプでした。『こうしたい』っていう欲が、基本的にないんですよ。
中学高校と学校を休みがちで、たまにフラッと学校に行って帰っていたので、友達もそんなにいませんでした。ぶ厚いメガネに髪の毛も長くてモサっとしていて、いつもオドオドしてる子でしたから、スクールカーストでいえば“圏外”。でも、なぜか“一軍”の子たちに『すずちゃん、可愛いね』って可愛がられていたんです。
ただそれは、私のことを“下”に見ていたからだって、当時から感じていました。だから高校2年になって私のインスタのフォロワーが急に増えたり、芸能界に入ったときに彼女たちの態度がガラッと変わって……。イジメのようなイタズラを受けるようになりました」
学生時代を振り返り、思うこと
2019年1月、ティーンに絶大な人気を誇る恋愛リアリティ番組シリーズ『白雪とオオカミくんには騙されない』(ABEMA)に出演し、華々しく芸能界デビューを果たした山之内さん。同番組でブレイクし、いきなり全国区の知名度に。一方で当時、同級生から生配信中にコメント欄で個人情報を暴露されり、学校ですれ違いざまに足を引っ掛けられていた“被害”を、公式YouTubeチャンネル「山之内之家」でも明かしている。
「自分なりに理由を探ってみると、『なんで、あの陰キャがテレビに出てるのよ』とか、『私が好きなメンズモデルと共演しやがって』っていう嫉妬だったみたいで……。なかにはふたりで遊んだことがある子もいて、表面的には仕方ないことなのかもなと受け止めつつも、内心では悲しかったです。
でも女の子同士の関係ってすごく複雑で、イヤでもその場にいなきゃいけないツラさがあったり、我慢をしなきゃいけないことが多いものですよね。だから、そうしてイタズラを受けることで学んだことも多かったと思います。自分に合う人を見極める力が身についたし、マイナスな環境から離れる勇気も持つこともできた。いい意味で、自分を強くしてくれたんじゃないかなと今では思っています」
芸能界入りする前も今も、山之内さんが親交を温めるのは“見極めた”友人達だ。
「基本、私は受け身なんですけど、昔から直感で『好き! この子と仲よくなれるな』と感じた相手とは、なぜか自分から動いてすぐに仲よくなれるんです。
たとえば、今でもしょっちゅう電話していて、私のYouTubeにも声で出演してくれた親友には、中学校の入学式の日に“ひと目惚れ”をして私から話しかけました。何年たっても、私が仕事で上京しても、どれだけ環境が変わっても、ずっと変わらないでいてくれる親友のひとりです」
暗い作品の「傷を抱えた主人公」に自分を重ねて自問自答……“母意識”が私を変えた
一方で、山之内さん自身にも“嫉妬を抱いた記憶”がある。
「『あの子になりたい』の歌詞のような、まわりの子への妬みはなかったのですが、自分ではどうしようもない“絵に描いたようにハッピーな家族”をうらやましく思っていました。ああなりたい、じゃなくて、ただ『いいな』という憧れです。
『あの子には仲のいいご両親がいていいな』とか、『家に帰ったら、あったかいご飯があっていいな』とか。『年末に家族で旅行した』『誕生日にあんなことしてもらって、これもらった』なんて話を聞くたびに、『いいな』って思ってました。
きっとそれぞれの家庭にも事情があったはずなのに、当時は自分のことしか見えなくて。まわりの子達が抱えているツラい話を聞いても、『いや、でもいいじゃん。家族仲よしだし。私なんか……』と結局、自分の話に持っていってしまう。そういう時期が長かったですね。
そのせいか、ハートフルな映画やドラマやマンガが全部、見られなかったんです。当時はハッピーエンドがすごく気持ち悪くて……今とはぜんぜん違う心を持っていました。でもそんな時期があったから、『いろいろな感情を知っているぞ』と今は思えています」
心の拠り所にしていたのは、暗いトーンの作品だった。
「小学生のころからいちばん好きなマンガが、『BASARA』(田村由美/小学館)です。すっごく切ないんですよ、本当に。
主人公の女の子・更紗(サラサ)が、“運命の子”といわれながら殺されてしまったお兄ちゃん『タタラ』のフリをして、全部ひとりでしょい込んで村の人のために戦って。そんななかで、たまたま更紗として出会った朱理と恋に落ちるけど、実はお兄ちゃんの仇で。でも、そんな宿命をふたりで乗り越えていくんです。
いろんなことがあった人ほど強いと思うし、ああいう関係性はやっぱり素敵だなと今でも思います。今年の1月に舞台化したんですけど、めちゃくちゃ悔しかったです。『私が更紗やりたい!』って(笑)。『BASARA』は現実には絶対にありえないことだから現実逃避でもあるんですけど、私は主人公に自分を重ねることが多いので、暗めの作品を好んで見ていました」
過酷な運命を背負った主人公に感情移入し、作品世界に浸った。
「志田未来さんが主演のドラマ『小公女セイラ』(TBS系、2009年)が、8歳のころリアルタイムで見ながら録画もしていたぐらい、めちゃくちゃ好きです。最初はお嬢様だったセイラが、召使いになっていじめられながら、ひたむきに生きていくっていうストーリーで。『ドラマって素敵だな』と初めて思えた作品で、忘れられないんです。
それから、いちばん好きな映画は『生きてるだけで、愛。』です。好きな人を振り回して傷つけて……っていうストーリーなんですけど、完全に自分を重ねて見て、勝手にツラくなっていました。でも自分のツラさを体現してくれてるような作品だから好きになったし、この映画を見ながら自分と見つめ合う時間を大切にしていて。
私は結局、傷を抱えた主人公が好きなんです。ひとりで閉じこもるクセがあるから、自分を重ねられるキャラクターを見つけたら、自分と似ていても、まったく似ていなくても、頭の中で勝手に演じて楽しんだり。ただひたすらに、自分と向き合い続けた思春期でした」
長い“修行時代”を経て、今は明るい作品も見られるようになった。
「子どものころは“子どもの視点”でしか物事を考えられなくて、大人の事情なんてわからないから、『なんで私ばっかりこんな思いをして……』という気持ちに陥ってしまっていました。
でも年齢を重ねた今、私もいつかお母さんになりたいですし、自分の子どもができたときのことを考えるようになってからは『家族っていろんな形があるな』と思えるようになって。他人の環境に憧れて嫉妬していたときもあったけど、今は山之内家に生まれて、ここまで生きてこられたことに感謝していますし、『私の人生これでよかったな』と思えています」
ツラい思春期から伴走してきた“ひと目惚れの親友”との関係にも、明るい未来の兆しが。
「彼女は出会った当時からイラストを描いていて、私はずっと親友の作品が好きです。私の絵もよく書いてくれて、誕生日には手書きのアニメーション動画を送ってくれます。『私は毎年、それで泣かされてる』って話もしていたんです。
そしたら彼女が、イラストにお手紙を添えてくれたことがあって。『あのとき、すずが私の絵で泣いてくれて、私の絵を好きって言ってくれて、だからこうやってずっと絵を続けられてる』と書いてくれました。
私もこういう道に進んだし、親友も今は3DCGやアニメーションのほうに進んでいて。いつか彼女が書いたアニメーションやイラストに、私はたとえば声優とか実写版の俳優とか主題歌とかストーリーとか……どんな形でもいいから一緒にお仕事できる機会があったら、めちゃくちゃ面白いねって話はよくしています。え、ワンピクを私達で? オファーお待ちしております(笑)」
Favorite Titles of Suzu
『BASARA』(田村由美/小学館)
『小公女セイラ』(TBS、2009年)
『パコと魔法の絵本』(中島哲也監督、2009年)
『生きてるだけで、愛。』(関根光才監督、2018年)
<PROFILE>
山之内すず(やまのうち すず)
2001年10月3日 兵庫県神戸市生まれ。2019年ABEMAの恋愛リアリティーショー『白雪とオオカミくんには騙されない』でデビュー。SNS総フォロワー数は110万人超。TVCM、地上波バラエティをはじめ、現在放送中の『何かおかしい』(テレビ東京系、毎週火曜24:30~)に出演するなど、女優としても活躍中。好評配信中の「1 PICTURE 1 STORY」vol.3のインスパイアソング『あの子になりたい』が初のデジタルシングルリリース
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