【市川染五郎さん】「年齢は意識していない。今を全力で生きるのみです」【スペシャルインタビュー】
新たなスタートを切る『鬼平犯科帳』シリーズで、父・松本幸四郎さんが演じる長谷川平蔵の青年時代である 〝若き日の鬼平〟こと長谷川銕三郎(てつさぶろう)を演じる市川染五郎さん。歌舞伎をはじめ、さまざまなジャンルでの表現に挑戦し独自の輝きを放っている染五郎さんが実践している〝ウェルビーイングなこと〟についてお話をお伺いしました。
――メンタル的な面で実践している〝ウェルビーイングなこと〟を教えてください。
僕の祖父(二代目松本白鸚)が「今が好きだ」とよく言うのですが、それは自分も共感するところで、今の積み重ねで人生ができていくので、とにかく今この瞬間に一生懸命になってやっていくことの積み重ねで未来を作っていく、そういう生き方をしたいなと思っています。
――フィジカルな面で意識されている〝ウェルビーイングなこと〟はありますか?
最近鍛えたいなと思っていて。遺伝だと思いますが太りにくい体質なので、食べて体を大きくするとか脂肪をつけるというのが難しく、筋肉で大きくするしかないなと。歌舞伎の衣裳は、役や作品にもよりますが、大きな衣裳を着る場合もあります。スケールの大きな立役を演じることが多い家なので、どっしりとしていたほうが代々やってきた役はやりやすいのかなと思います。そういう意味でも体をとにかく大きくしたいなというのは前から意識していますね。
――では、これがあると自分が頑張れる、つい機嫌がよくなってしまうようなモノ・コト・ヒトなどはありますか?
…ないです。何を活力にして生きているのかな(笑)…。好きなものが見つかるとすぐ熱中してしまいますが、飽きやすいタイプです(笑)。 食べ物も一瞬ハマってすぐに飽きてしまいます。マイケル・ジャクソンが好きとか、変わらないものはもちろんありますが。(マイケル・ジャクソンは)ガーッと夢中になって、その時期が過ぎて〝殿堂入り〟した感じですね。
――変わらず好きなものは別格になっていくんですね。それでは、疲れた時はどんなことをしてリフレッシュされていますか?
ひたすら寝ることですね。次の日の予定が遅いときや何もなければ、ずっと寝ています。朝が早くて一日長く活動して疲れていても「寝たらもったいない」とつい思ってしまうんです。みんなが寝静まった時間に一人でなにかするのが好きで。(時間を)自由に使いたいという気持ちがあって。 気づいたら朝の7時とか8時まで起きていたということもあります。
――深夜に一人でゆっくり自分だけに使える時間がリフレッシュの時間になっているんですね。
そうですね。その日によってすることは違いますけど、音楽を聴いたりゲームをしたり、自分が次に演じる役や作品に関して調べたり考えたり、そういう時間が楽しいです。あと、夜食は毎日食べていますね。深夜に営業しているお店からデリバリーサービスで頼んだりしています。
――ほかにはどんなことをしている時が一番楽しいですか?
いろいろな作品に触れて、「こういう演出を取り入れてみたいな」とか「この作品を歌舞伎にしたらこうなるんじゃないかな」とか考えている時だと思います。出演すると決まっているものじゃなくてもいろいろと想像して、「ここにこういう演出を入れたら面白いだろうな」「この作品をこう書き換えたら面白いだろうな」と考えるのはわりと好きですね。
――染五郎さんのパブリックなイメージはいつも落ち着いていてクール、お芝居にストイックな印象がありますが、ご自身では自分のことをどんな性格だと思いますか。
ストイックかどうかはわからないですが、やっぱり好きなものに熱くなるところはあります。「落ち着いている、クールだよね」ともよく言われるのですが、自分ではあまりそう思っていないです。単純に人見知りなだけで、初対面の人とは全然喋れないのでクールな感じに見えるのかもしれないですね。知らない人には出せないですが、実はわりとひょうきん者な一面もあると思っていて。小さい頃は楽屋で気心の知れた人の前では悪戯をしたりしていましたね。
――役者としてだけではなく声優やモデルなどマルチな活躍をされていますが、何かを表現するという点で大切にしている共通点はありますか。
いろいろな機会をいただくことはありますが、声優やモデルとしてやっているのではなく、〝歌舞伎俳優がアニメやファッション誌に出させていただいた〟という感覚なので、媒体が違っても自分の中でははっきりした区別はないです。もっと大きく〝表現する世界〟というくくりで考えているので、歌舞伎以外のところだからと言って全然違う心持ちでやるという意識はしていません。ただ他の分野に行った時に、歌舞伎俳優ということを理由に何かを拒否したり、できないというのは嫌なので…その分野・その作品でそのことだけをとにかく考えて、媒体が変わっても表現に全力で向き合って〝今を生きる〟ようにしたいと思っています。
――20歳になるまでにこれだけは挑戦してみたいということはありますか?
ないです(笑)! 18歳で車の免許が取れるとか20歳でお酒が飲めるとか法律上の区切りはありますけど、あまり年齢は意識していないです。おじさんになっても年齢にとらわれずに、とにかく今を全力で生きるのみですね。
――最後に今回の『鬼平犯科帳』テレビスペシャル版や来年5月10日公開予定の劇場版を楽しみにされている皆さんに向けてメッセージをお願いいたします。
時代劇は硬いというイメージを持っている若い世代の方もいらっしゃると思いますが、堅苦しく歴史を勉強するものではないですし、エンターテインメントとして楽しんでほしいという思いが一番強いです。新時代に向けた新しい時代劇になっていると思うので、難しいものだと思わずに、エンターテインメントとして純粋に楽しんでいただけたら嬉しいです。
市川染五郎
’05年3月27日生まれ 東京都出身 血液型 AB型●’05年、東京都出身。十代目松本幸四郎の長男。祖父は二代目松本白鸚。’09年、歌舞伎座『門出祝寿連獅子』で四代目松本金太郎を名乗り、初舞台を踏む。’18年に歌舞伎座『壽初春大歌舞伎』において『勧進帳』で源義経を勤め、八代目市川染五郎を襲名。’22年6月に『信康』で歌舞伎座初主演。大河ドラマ『鎌倉殿の 13 人』(NHK)や映画『THE LEGEND & BUTTERFLY』への出演のほか、劇場アニメ『サイダーのように言葉が湧き上がる』では声優に初挑戦している。
『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』
‘69年に初代・松本白鴎主演で初映像化され数々の名優に演じ継がれてきた『鬼平犯科帳』。’24年より松本幸四郎を主演に迎え〝鬼平〟新時代がスタート。「時代劇専門チャンネル」で1月8日(月)放送開始のテレビスペシャル版『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』を皮切りに5月公開の劇場版『血闘』、5月以降には連続ドラマ『でくの十蔵』『血頭の丹兵衛』が放送・配信開始。市川染五郎は〝鬼平〟の青年時代・長谷川銕三郎を演じる。
染五郎さん着用衣装/ニット¥147,400ジャケット¥528,000パンツ¥187,000ベルト¥106,150ブーツ¥403,700(すべてベルルッティ/ベルルッティ・インフォメーション・デスク 0120−961−859)その他/スタイリスト私物
撮影/木村 敦 ヘアメーク/AKENE スタイリング/中西ナオ 取材/門脇才知有 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)