「股関節」が痛い原因は?薬剤師監修【股関節が痛いときの治し方5選】
歩いているときに股関節に痛みや違和感を感じることはありませんか? 下半身と骨盤をつなぐ股関節は、人体の中で最も大きい関節。体重を支え、しゃがんだり歩いたりといった動作に不可欠な部分であり、股関節を傷めると歩行などの日常動作が難しくなります。今回は股関節が痛む理由や痛いときにやってはいけないこと、痛みの予防法などを解説します。
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1.股関節が痛む理由
股関節が痛むのにはさまざまな原因が考えられますが、よく知られるものとしては変形性股関節症や股関節骨折などが挙げられます。
変形性股関節症は股関節の軟骨がすり減って、痛みや骨の変形が生じている状態のことです(イラスト参照)。 変形股関節症の初期は脚の付け根に軽い痛みや違和感を感じる程度ですが、徐々に悪化して太ももや膝などにも痛みを感じたり、あぐらをかくのが困難になったりします。
また股関節を骨折すると、立てないほどの激しい痛みを伴うのが一般的で、寝たきりや介護状態になってしまうことも。迅速な手術が必要です。 股関節は肩・手首・背中とともに高齢者が骨折しやすい四大骨折部位として知られており、転倒時に骨折するケースが多く見られます。
2.股関節が痛いときにやってはいけないこと
股関節が痛いときは、股関節に負担をかける姿勢をとるのはやめましょう。具体的にはあぐらや正座、しゃがみ込みなどの姿勢です。股関節を深く曲げるような運動も控えてください。
ただし痛みを気にして全然運動しないのもよくありません。運動不足は股関節周囲の筋肉のこわばりを招き、痛みの悪化につながります。股関節に負担をかけにくい水中ウォーキングや一般的なウォーキング、自宅でできるストレッチなどを継続して運動不足にならないようにしましょう。運動の種類や強度で悩む場合は、まずは整形外科で関節の状態を診てもらい、主治医に相談することをおすすめします。
股関節の痛みや違和感が続く場合には、放置せず早めに整形外科を受診することが大切です。
3.股関節の健康を守るためにできること
股関節の健康を保つために、痛みを和らげる方法や骨を丈夫に保つ方法など、おすすめのセルフケアを紹介します。
①弾力性のあるシューズを選んでみる
股関節に痛みがあると、歩くのが億劫になってしまいます。股関節に負担をかけにくい靴を選んで、歩行時の痛みを和らげましょう。
中敷きに弾力のある靴を選ぶと歩行時の衝撃が吸収され、痛みを軽減できます。健康シューズの専門店に相談したり、インターネットで「股関節 靴」などと検索して自分に合う商品を探したりするとよいでしょう。
②習慣的に運動を行う
股関節に負担をかけない軽めの運動で骨と筋肉を鍛えましょう。ストレッチやウォーキングなどの軽い運動を行うと、全身の血流が良くなります。軟骨の細胞にも栄養や酸素がしっかりと届き、軟骨成分プロテオグリカンの生成を促すといわれています。
骨や筋肉は使わなければ衰えてしまうため、継続的に運動することが大切です。なお関節の痛みで医療機関を受診している場合には、運動の可否や強度を主治医に確認してください。
③食事からカルシウムやビタミンDなどを摂取する
丈夫な骨を維持することは、将来的には股関節骨折などによる寝たきり状態を避けることにもつながります。骨の主成分であるカルシウムや、カルシウムの腸管からの吸収を助けるビタミンDを日頃の食事から補っていきましょう。
カルシウムは牛乳、チーズなどの乳製品や丸干しイワシ、水菜、モロヘイヤなどの緑黄色野菜に豊富に含まれています。 カルシウムが不足すると骨がもろくなって骨粗しょう症を起こす可能性があるため、意識的に摂取しましょう。
ビタミンDは干しシイタケやキクラゲなどのきのこや、鮭などに多く含まれています。
④日光浴でビタミンDを増やす
ビタミンDは食品からの摂取のほか、日光浴によって増やすことが可能です。日光に含まれる紫外線が体内でのビタミンDの合成を促します。
紫外線の浴びすぎはシミ・シワなどの原因になりますが、適度な日光浴でビタミンDを補うことが骨にとっては重要。目安として1日20~30 分前後の日光浴を習慣づけるとよいでしょう。
⑤漢方薬を試してみる
股関節をはじめとする関節の痛みには、漢方薬を服用するのもおすすめ。西洋薬のいわゆる「鎮痛薬」が急性の痛みにピンポイントに作用するのに対して、漢方薬は複数の生薬成分が痛みの背景にある根本的なトラブルへと働きかけます 。
具体的には「体を温めて冷えによる痛みを改善する」「血流を良くして関節や神経の機能を回復する」「関節に溜まった余分な水分を取り除く」といった漢方薬が適しています。
<関節の痛みが気になる人におすすめの漢方薬>
・桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
体を温めて血流を良くする働きがあり、手足が冷える人の関節痛、神経痛に効果的です。
・防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
関節の痛みによく使用される漢方薬で、変形性膝関節症に対して用いられる場合もあります。水分代謝を高めて、肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、水太りなどへの効果が期待できます。
・牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
栄養を補い、加齢によって衰えた体の生理機能を整えます。全身を温めて足腰の新陳代謝を高める働きがあり、下肢や腰の痛み、しびれの改善にも役立ちます。
関節の痛みに有効な漢方薬にはこの他にもさまざまな種類があり、実際に服用する際には自分の症状や体質に合ったものを見極めなければなりません。
自分に合わない漢方薬を服用しても効果を実感しにくく、場合によっては副作用が出ることもあるので注意しましょう。漢方薬に精通した医師や薬剤師に相談すると安心です。
痛みがつらくて病院や薬局に行くのが大変な人や、対面相談の時間や手間を省きたいという人は、オンラインの漢方相談を活用してみてはいかがでしょうか。最近はスマホひとつで利用できる個別相談サービスも話題です。
薬剤師・元漢方薬生薬認定薬剤師 / 修士(薬学) / 博士(理学)。神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
編集/根橋明日美 写真/PIXTAほか
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