【甘糟りり子さん(62歳)】孤独は悪くない。でも「もっとしておけば」と後悔したことは…
’80~’90年代の華やかなバブル時代を謳歌した作家の甘糟りり子さん。40代でロンドンマラソンを完走し、都心から海辺の暮らしへとシフト、さらには父の死という人生の転機がいくつもあったといいます。60代を迎え、必要だと思うのは「孤独を楽しむこと」。鎌倉・稲村ガ崎のご自宅でお話を伺いました。
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孤独は悪いものではない。ひとりの時間を充実させることでその人の個性が生まれる
メンズブランドからスタートした「アプレッセ」の白シャツをさらりと着こなし、築100年近くになる趣のある自宅の縁側で。「今はダイエット中。月3〜4回は、ジムでパーソナルトレーニングをしています。運動は大事です」
《Profile》
1964年神奈川県生まれ。ファッション、映画、車、食など、最新情報を織り込んだエッセイや小説で注目される。著作に『バブル、盆に返らず』(小社)『鎌倉の家』(河出書房新社)など多数。
孤独を楽しめないと本当の大人にはなれない
私自身は結婚も出産も経験がありませんが、ポリシーがあったわけではなく、目の前の締め切りをこなし、好きなことに夢中になっていたら、あっという間にこの年齢になったという感じでしょうか。そのことに後悔はないですね。世間的には孤独で可哀そうに見えるかもしれません。でも、孤独を楽しめないと本当に大人にはなれないと思います。孤独は悪いものではない。自分と仲良くなればいいんですから。パートナーがいても母親であっても、ひとりの時間を充実させることで、その人の個性が生まれるのでは。
後悔しているとしたら、もっともっと本を読んでおけばよかったということ。それなりの読書経験はありますが、得意分野以外の知識が少ないなあと。小説だけでなく、映画や舞台、音楽やアートなど何かの作品を楽しむときに必要な最低限の知識ってあると思うんです。旅行や観光もそうですよね。私にはそれが足りない気がして、今からでも自分の興味に直結しているもの以外の本を読むことを心がけたいです。
大袈裟ですが、生きるうえで、心を揺さぶることって大切だと思います。心の新陳代謝といったらいいでしょうか。物語や何かの作品に触れることで心に刺激を与えるのは、ある意味心のトレーニングなんじゃないかな。年齢を重ねると、どうしてもいろいろなことが新鮮でなくなってしまいます。だからこそ、本を読んで物語に触れて、心を揺さぶりたい。情報を得るとか教養を身につけるといった直接的な利がない、一見無駄な行為こそが人生を彩ってくれると実感します。
むしろ私が無駄だと思うのは、他人の芝生の青さばかりを気にすること。ちゃちな嫉妬やマウンティングをするエネルギーと時間を、自分が好きなこと、熱中できることに使ったほうがいい。そんなふうに思えるようになったのは、母の影響が大きいかもしれません。母は今91歳ですが、自分の「好き」のものさしがあって、いまだにそれがブレないんですよね。かくありたいと思います。
40代のころの私
左は、生前のジョエル・ロブション氏と。シースルーの黒のブラウスを着た私は、完全にバブルを引きずっていますね。その後、マラソン、海の近くへ引っ越し、父の死、と人生の転機がいくつもありました。
甘糟さんが40代に伝えたいこと
ファッションも器も食べ物も世間や誰かの評価は関係ない。自分が好きかどうかがすべて。その姿勢は母から学びました。器好きの母は、器を買うとき、作家が有名かどうかより、盛り付ける料理が思い浮かぶことを優先していました。
本記事は、美ST編集部が取材・編集しました。「美ST」は16年以上にわたり、40代&50代女性の美容とライフスタイルを追求してきた月刊美容誌です。
『美ST』2026年5月号掲載
撮影/中川真人(magNese) ヘア・メーク/SATOMI 取材/安田真里 編集/和田紀子
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