D.LEAGUE優勝チームディレクター・KTRさん(35)「妻の言葉で気づいた」“本当のリーダー”とは?

まもなく新シーズンが開幕する日本発のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」の舞台で、昨シーズン最下位から今シーズン王者へ。劇的な優勝を果たしたFULLCAST RAISERZ。その快進撃の裏には、チーム全員の意識改革と、ディレクター・KTRさん自身の”リーダー像”を根本から見つめ直した経験がありました。「優しさを履き違えていた」。そう振り返る昨シーズン、自分を変えるきっかけになったのは、意外にも奥様から投げかけられた厳しいひと言だったそうです。人を率いるとはどういうことか。勝つチームはどう生まれるのか。ドラマチックな優勝までの舞台裏とともに、チームを導く中でたどり着いた”本当のリーダー像”について、お話を伺いました。

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■D.LEAGUEとは?

D.LEAGUE(Dリーグ)とは、ダンスのプロ育成とアート・スポーツ・ビジネス面での新たな価値創造を目指し、2020年8月に発足した日本発のプロダンスリーグ。プロ野球やJリーグのように、才能あるプロダンサーが企業チームと契約し、約半年間のレギュラーシーズンを戦い、チャンピオンシップ優勝を目指します。2026-27シーズンは「TOYOTA ARENA TOKYO」を舞台に、【BLOCK HYPE】【BLOCK VIBE】の2ブロック・20チームが参戦。さらなる盛り上がりが期待されています。

【D.LEAGUE】公式YouTube
D.LEAGUE(Dリーグ)公式ホームページ

「映画が一本撮れる」ほどドラマチックだった優勝までの道のり

今振り返ると、今シーズンは対戦チームを決めるくじ引きからドラマが始まっていたなと思います。新チームのM&A SOUKEN QUANTSが最後に引くことだけは決まっていたので、昨シーズン最下位だった僕たちが引くのは最後から2番目。あの時、逆のくじを引いていたら、組み合わせも変わっていたし、この物語は生まれていなかったかもしれない。もちろん違うドラマはあったと思うんですけど、結果だけを見ると、できすぎているというか、本当に僕たちのために用意されていたようなシーズンでした。

自分たちでも昨シーズンと比べて明らかにチームが変わったと感じていましたし、周りの方からも「今季のレイザーズは最初からまとまりが違った」と言っていただくことも多くて。一番大きかったのは、一人ひとりの意識が変わったことだと思います。今までは「優勝しよう」という大きな目標だけを見ていたんですけど、今シーズンは「D.LEAGUEで勝つ」ということを全員がちゃんと理解して、それぞれが自分の役割を考えるようになりました。

FULLCAST RAISERZ / RAISE GOLD 【D.LEAGUE 25-26 CHAMPIONSHIP FINAL MATCH】

チームのターニングポイントは、妻から言われた言葉

僕はチームの最年長で、下は18歳。年齢もキャリアも性格もバラバラなメンバーをまとめる立場ですが、昨シーズンまでは、できるだけメンバーに負担をかけたくない、自分が何とかしてあげたいという気持ちが強かったんです。「みんなには踊ることだけに集中してほしい」と思っていました。でも、その考えが変わるきっかけがありました。シーズン中、メンバー同士がぶつかる出来事があって、そのことを妻に話したら、「それ、全部あなたのせいだよ。その状況を生んでいるのは誰なの? ディレクターでしょう」と、核心をつかれて気づきました。言われた瞬間は正直腹が立ったけど(笑)、彼女自身もアーティストとして活動しているので、プロデューサーやチームを率いる立場を僕以上に理解しているんですよ。なので話を聞いているうちに、「確かにその通りだな」と思えて、自分がチームの舵をきちんと切れていなかったことに、そのとき初めて気づきました。

ディレクターとして「優しさ」を勘違いしないこと

今振り返ると、メンバーへの優しさだと思っていたことは、本当の優しさではなかったんですよね。本当の優しさは、必要なことはきちんと伝える、迷ったときにはディレクターとして責任を持って舵を切ることなんだと思います。だから今シーズンは、伝えるべきことは伝え、そのうえでメンバーの個性を信じて役割を任せるようにしました。人って、言われて動くより、自分で考えて動いたほうが責任感って絶対に生まれるんですよね。結構、一人ひとりが「チームのために自分は何ができるか」を考えて行動するようになり、その積み重ねがチーム全体を大きく変えてくれたと思っています。とは言っても、自分自身は本来「俺についてこい」というタイプではないので、正直、ディレクターに向いていないんじゃないかって思うことも未だにあります。それでも、自分なりにリーダーのあり方を模索しながら、チームと一緒に成長してきた実感があります。

来シーズンにかける思いは?

今シーズンは優勝することができましたが、自分たちの力だけでつかみ取ったとは思っていません。応援してくださるファンの皆さんがいて、オーディエンス投票があって、スタッフの皆さんをはじめ、本当にたくさんの方に支えていただいたからこそ見ることができた景色だったと思っています。とはいえ、僕たちの中では、もう優勝したことなんて忘れているくらいで、気持ちは最下位だった頃と変わらない。だから、これからもずっとチャレンジャーです。もちろん目標は連覇ですし、その先も見据えています。

「Dリーグは“2分15秒の人生をかけた最強のアート"」

D.LEAGUEの一番の魅力は、なんと言ってもあの“2分15秒”にあると思います。僕たちはその一瞬のために、命をかけるくらいの覚悟で作品をつくっているので、その熱量を生で感じられるだけでも、会場に来る価値はあるはず。そして、ダンスはアートです。同じ作品でも、まったく同じパフォーマンスは二度とできません。あの2分15秒に立つメンバーの感情や空気感、その瞬間にしか生まれないエネルギーが全部詰まっているんですよ。本番は一度きりだからこそ、そこに生まれる熱量は唯一無二なんです。まさに”最強のアート”。その瞬間にしか存在しない作品と、そこに懸けるダンサーたちの魂を、ぜひ一度体感してほしいです。

ダンサーがスポーツ選手のように子どもたちの憧れになる未来を

D.LEAGUEが始まってからずっと思っていることは、子どもたちにとっての夢や憧れになれる存在でいたいということ。ダンスを始めるきっかけが、「KTRみたいになりたい」「Dリーガーになりたい」そんなふうに思ってダンスを始めてくれる子が、一人でも増えたら、本当に嬉しいですね。サッカーや野球だって、何十年、何百年とかけて今の文化を築いてきたわけですから、それはすぐに実現できることじゃないと思っています。でも、僕が死ぬ頃には、ダンサーという職業が子どもたちにとって当たり前の憧れになっていたらいいですね。……本当は来年くらいになってほしいですけど(笑)。そのためには、ダンサーも踊るだけではなく、自分たちの言葉で思いを伝えたり、ダンスの魅力を届けていくことも大切だと思っています。チーム、選手ひとり一人が「このリーグをもっと大きくしたい」という思いを持って行動していけば、D.LEAGUEはもっと魅力的な場所になっていくはずです。そんな未来を、みんなでつくっていきたいですね。

KTR (ケーティーアール)PROFlLE

1990年11月18日生まれ、愛媛県出身。KRUMPダンサー。日本発のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」の「FULLCAST RAISERZ」ディレクターを務めるほか、KRUMPチーム「RAG POUND」のメンバーとして国内外で活動。高校生の頃ダンスを始め、バトルシーンで頭角を現し、数々の大会で実績を重ねる。2025-26シーズンにはFULLCAST RAISERZを悲願のリーグ初優勝へ導いた。2026年1月にはアーティスト・タレントの松田ゆう姫さんとの結婚を発表。

FULLCAST RAISERZ 公式YouTube

KTR インスタグラム

撮影/山根 悠太郎[TRON] 取材・文/齊藤美穂子 構成/福吉由紀子

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