「収入がないと、家族の役に立ってない?」夫の転勤でキャリアを中断したママのお悩みにプロが回答!

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「お金ってなんで必要なの?」。何気ない子どもの質問にドキッと。今回は、夫の転勤を機にキャリアを中断。収入がなくなって罪悪感を抱いてしまってるママに、お金のプロ・田内学さんがアドバイス!

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元GS、社会的金融教育家・田内 学さんが回答!
ママのための
「お金の教育」悩み相談室

\今月のお悩み/
夫の転勤を機にキャリアを中断。
収入がなく、自分が役立ってない感が
どうしてもあります

【相談者】
Tさん(30代 3歳、2歳女の子ママ
育休明けで一時的に専業主婦に)

都内で看護師として働いていたが、夫の転勤を機に和歌山へ。東京で利用していた育児支援が少なく、保育料などを考えた結果、転勤先で復職しても家計がプラスにならないため、仕事を見送り。

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田内 学さん(以下、田内) 現在は、ご家族で和歌山に暮らしているのですね。

読者Tさん(以下、T) はい、夫の転勤についてきました。最初は単身赴任でしたが、やはり家族みんなで一緒に暮らしたいと思い、2歳と3歳の娘を連れて引っ越してきました。夫の転勤はあと2年なので、その後は東京に戻る予定です。

田内 Tさんは看護師とのことですが、今はお仕事をされていないのですよね。

T 育休と産休が続いてトータル4年ほど仕事から離れました。本当は和歌山でも働きたかったのですが、下の子が3歳未満なので保育園に預けると月に8万~9万円くらいかかります。東京は保育園が完全に無償化になっているので、改めてその差に衝撃を受けました。さらにこちらでは自分が調べた限りでは看護師の時給が1,200円くらい。保育料を考えると、家計がほとんどプラスにはなりません。それなら今は自宅でしっかり子どもと向き合いつつ、自分のスキルを上げる時間にしようと思いました。

田内 東京と比べると働くための条件が異なるんですね。

T そうなんです。「看護師はいつ・どこでも働けるはず」と思われがちですが、子どもがいると全然違う、と実感。東京では育児支援も多いし、働く場所もたくさんありました。こちらでは周りに祖父母がいて家族に子どもを預けながら働いている人も多いようですが、私たちには頼れる親族も近くにいません。シッターを探そうにも、東京に比べると本当に少なくて…。

田内 働きたいけれど、働くことのメリットが薄くなってしまう、と。

T そのとおりです。だから散々悩んだ末に、今は専業主婦になると決断しました。ただ、自分の収入がなくなったことは思った以上にプレッシャーを感じています。今まで、自分で稼いだお金を自分の裁量で使ってきましたが、今は夫の扶養でお小遣い生活。美容院代や洋服代などは、これまでの貯金を切り崩しています。しばらく節約しようと思うのですが、VERYを読んでいるとやっぱり欲しいものもどんどん出てきますし(笑)。

田内 お金の使い方について、夫さんが何か注意するようなことはありますか?

T 直接「使わないで」と言われたことはありません。でも、夫の収入は家族全体のお金なので、「私が使えば、子どものためのお金や家のためのお金が減っていく」という雰囲気です。

田内 お金を使えるかどうかというより、使い道を自分で決められなくなったことが苦しいのでしょうか。

T はい、それに加えて、「自分のお金が家計に反映されていない」ということに罪悪感を抱いてしまって。育休中も、育休手当の半分は家計に入れていました。働いて得たお金ではないけれど、それでも自分がお金を家に入れていることで「私も家族の一員として役に立っている」という充足感が得られていました。それが完全になくなってしまった今、「私って役に立っているの?」という気持ちになってしまって。スキルアップのための勉強はしているとはいえ、直接お金につながっているわけではないし…。

アドバイス1
夫のキャリアアップの背景には
確実に自分の力があるのを忘れずに

田内 ただ、収入がなくても、子どもを育て、家の中の持ち場を守っているわけですよね。そこに対する充実感や、周囲から尊重されている感覚はないですか?

T 家事や育児って、できて当たり前だとつい思ってしまうんです。そんなことないって頭ではわかってるんですが。育児に関する文献を読んだりして、子育てもかなり頑張っている自覚はあります。それでも、どこかで「外で働いている人のほうが偉い」と思ってしまって。

田内 ご家族が、「稼いでいる人のほうが偉い」と言うわけではないですよね?

T はい。夫だってそんなふうに思ってはいません。ただ、夫は今回、昇進につながる転勤として和歌山に来ています。彼は社会人として認められ、キャリアを積んで、収入も増えている。一方で私は仕事を辞めて、収入もなくなりました。だから夫から「ボーナスがこれだけ出たよ」と聞かされると、ありがたいというよりも悲しくなってしまいます。なんだか卑屈ですよね…?

田内 そんなふうに感じる必要はないと思います。夫さんが仕事に集中できているのは、Tさんが家庭を一手に引き受けているから。夫さんがキャリアアップしている背景には、確実にTさんの力がある。もしTさんが東京に残って働き続けていたら、夫さんは家族と離れて暮らすことになります。それに、Tさんの仕事を優先して、夫さんが転勤を伴う仕事を辞めて東京に残るという選択肢も当然あったわけですよね。その中で、ご家族全体のことを考えて、Tさんが仕事や収入をいったん手放す選択をした。そう考えると、Tさんが何かを諦めたことで今の家族の生活が成り立っている、と捉えることもできます。ただそこには給料やボーナスのような、分かりやすい数字がつきません。だからこそ、Tさんの貢献が見えにくくなっているのだと思います。

T 夫は、私が仕事を諦めたことを「理解している」とは言っています。でも実際にどれだけのものを諦めたのかを分かってもらえている感じはしません。

アドバイス2
経験は、通帳の残高のように
目には見えないし、なくならない

田内 今の気持ちを率直に伝えてもいいと思いますよ。ただ、夫さんに理解してもらうこととは別に、Tさん自身も、家庭や子育てを引き受けていることを過小評価しないでほしいと思います。突然、たとえ話で恐縮ですが、僕たちが生きていくために一番必要なのは酸素ですよね。ただ酸素には、値段がついていません。一方で、コロナ禍ではマスクの値段が大きく上がりました。でも、マスクのほうが酸素より価値があるわけではありません。値段がつくのは、基本的には誰かと交換できるものです。子どものためを考え、その子に合った関わり方をしながら育てることは、お金を払えば誰かに頼める部分もあるかもしれません。でも、自分の子どもを大切に育てたいという気持ちや、その子との間に積み上がっていく時間は、お金とは交換できない。だから値段がついていない。価値が低いということではないんです。お金が発生するのは基本的には“自分の知らない人”と助け合うため。家族や親しい人の間では、お金を介さずに支え合うことが多いですよね。そう考えると、外で働いて得る収入だけが貢献の証しではありません。Tさんは今、ご家族に対してしかできない仕事をしています。パートナーの方が働ける環境をつくり、お子さんを育てている。まずはTさん自身が、今やっていることの価値をきちんと認めることも大事だと思います。東京に残って働き続けた場合の自分と今の自分とを比べてしまうと、どうしても収入やキャリアという面では失ったものが目につきやすくなります。でも、今のTさんは子どもと一緒に過ごす時間を得られています。もちろん、それでキャリアへの不安がなくなるわけではないでしょう。ただ、失ったものだけでなく、「今、何を得ているのか」を考えることは大事だと思います。

T ありがとうございます。実は、いつか看護師の経験と保育を組み合わせて働けないかと考えて、保育士の資格を取りました。今は児童発達支援管理責任者の資格取得にも取り組んでいて。将来的に、自分が理想とする療育施設を立ち上げたいという夢があります。来年度、娘たちが2人とも幼稚園に入ったら、療育施設などでパートとして働き、現場を学びたいです。

田内 それなら今はまさに、将来のために力を蓄えている期間ですね。学んだ知識や子どもと向き合った経験は、通帳の残高のようには目には見えません。だから、「自分は止まっている」と感じやすい。でも、Tさんの中には、看護師としての経験に加えて、保育の知識や、実際に子どもを育てる中で学んだことが蓄えられています。それはお金と違い使っても減らないし、将来仕事に戻ったときにも生きるものだと思います。資格さえあれば大丈夫という話ではありませんが、「これだけ積み上げた」と自分でも周囲にも見えやすくなる。その意味では、Tさんにとってその資格は心の支えにもなると思います。

T そう言ってもらえると、すごく元気が出ます!

田内 さらに言うと、夫さんのキャリアが積み上がっていくと同時に、Tさんが家庭の中で果たしている貢献も、着実に積み上がっていると思います。給料やボーナスには表れないだけで、確かに存在していますから。

T 夫の成果がうれしい半面、自分には何もないように感じていました。でも、夫がキャリアを積めていることにも、今の家族の生活にも、自分が関わっているんですよね。まずは自分自身が、そのことを認めてあげようと思います。


田内 学さん
2001年、東京大学工学部卒業。2003年、同大学院情報理工学系研究科修士課程修了後、ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーダーに。2019年に退職後は、子育てのかたわら、金融教育家として講演や執筆活動を行っている。@tauchimnbで経済やお金の情報を発信中。

「読者が選ぶビジネス書2026グランプリ」リベラルアーツ部門第1位受賞
『お金の不安という幻想』
田内 学著 ¥1,650/朝日新聞出版

お金の不安から抜け出すための生存戦略。老後の不安に怯える学生、年収で価値を測る子どもたち。膨らむお金の不安の背景には何があるのか? 労働と投資、どちらが報われる? など1万人の声から導き出した不安を希望に変える一冊。

撮影/吉澤健太 イラスト/犬ん子 取材・文/樋口可奈子 編集/中台麻理恵
*VERY2026年9月号『ママのための「お金教育」悩み相談室』より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

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