女優・當真あみの“演じること”への想い「苦しい感情でも“お芝居って楽しい”と思いたい」

透き通るような透明感の奥に息づく、凛とした芯のある眼差し。変幻自在に魅力を開花させる注目の俳優・當真あみさんが、bisに初登場。その眼差しの先にある、“演じること”への真摯な想いに迫る。

ファッションは「自分らしいスタイルを模索しているところ」

シャツ¥64,900、スカート¥68,750/ともにルルムウ キーチェーン¥30,800/ダブレット(エンケル)

今号のテーマ「Sentiment」から派生した、6つのスタイルに挑戦しましたが、初めてのbisで、気になるファッションはありましたか?

普段からあまり短いスカートを穿くことがないので、ピンクトラッドのコーディネイトは新鮮な挑戦でした。役柄で制服を着ることはあっても、ひざ上のスカートを穿くキャラクターを演じた経験はほとんどなくて。でも、実際に着てみたらとても楽しくて、初めてのスタイルにワクワクしました。スポーティロマンチックも印象に残っています。パンツの上にスカートを重ねた冒険的なスタイリングで、フリルがあしらわれたガーリーなロングスカートに、スポーティなアイテムを合わせることで、かっこいい雰囲気に。そういうギャップがすごく面白かったです。それから、大きなリボンがちりばめられたクラシックモードのドレスも、とても可愛いと思いました。

普段はどんなファッションが好きですか?

いつもはすっきりとしたシンプルな服装が多く、よくデニムを穿いています。お仕事を始めたばかりのころは、ファッションのことがあまりよくわからなくて。周りの方に「こんなお店があるよ」と教えていただいたり、サイトとかで可愛いアイテムを見つけてブランドを知り、実際にお店に足を運んでみたり。そうやって自分らしいスタイルを模索しているところです。

映像作品とファッション撮影では、取り組み方や気持ちに違いはありますか?

ファッション撮影の経験はそこまで多くないので、「これで合っているのかな?」と、現場で少し緊張してしまうこともあります。正解が何かはまだわかりませんが、いろんな雑誌を見てポージングを研究したりしながら、少しずつ感覚をつかんでいきたいです。また、映像作品のときは、カメラは存在しないものとして演技をすることが多いのですが、ファッション撮影ではカメラを意識しながら表現することが大切だと思います。求められる感覚がまったく違っていて、そこがまた面白いなと感じています。

俳優として経験を積むことで、現場での心境はどのように変化していきましたか?

お芝居を始めたばかりのころは、台詞を間違えないようにするのに精一杯で、現場の空気にも圧倒されていました。それに、画面越しに見ていた俳優さん達と実際に同じ空間でお芝居をしているということ自体に、すごく緊張していたんです。経験を積むことで、今ではそこまで緊張することなく、現場に行けば自然とスイッチが入るようになってきました。でも、大河ドラマでキャスト一同が揃った重要なシーンの撮影のときは、独特の重厚な空気に飲み込まれそうになって……。久しぶりに胸がドキドキしてしまいました。

演じるときに意識していること

サイクリングシャツ¥29,700/ヒュンメル オー(サカスPR) スカート 参考商品/ベイシックス レイヤードパンツ¥59,400/ボディソング(ティーニー ランチ) キャップ¥8,800、キャップに巻いたスカーフ¥12,870/ともにカシラ(カシラ プレスルーム) シューズ¥44,000(参考価格)/ノントーキョー

注目作品への出演が続いていますが、演技をするときに、意識していることはありますか?

感情が動く瞬間にも、自分自身がその役の気持ちをきちんと受け止めて、無理なく表現できているか。この役を“自然に”演じられているかを意識しています。ある現場で、台詞のないシーンにもかかわらず、先輩の俳優さんがモニターで自分の所作をじっくりと観察する姿を見かけました。瞬きや目線の動きなど、ほんの小さな表情の変化にまで感情をのせてお芝居をしている姿が印象的で。私も、台詞だけでなく所作ひとつひとつにも気を配って演技できるようになりたいと思いました。

役に寄り添っていくうえで、どんなふうに心を近づけていくのでしょうか?

演じる役によって性格も考え方もまったく違うので、まずは自分自身を軸に「このキャラクターと私の間にはどれくらい距離があるんだろう?」と考えることから始めます。台詞の意味や物語の背景を想像しながら掘り下げていくうちに、「ここは自分と似ているかも」「これはちょっと遠いな」と整理され、声のトーンや話し方が徐々に決まっていきます。それでも役の輪郭がまだ見えてこないとき、監督から「あなたがその役のいちばん近くにいて、いちばんの理解者になってあげて」とアドバイスをいただいたことがありました。それ以来、「この人が隣にいたら、きっとこう見えるんじゃないかな」と想像して、その人のしぐさや声を真似するような感覚で、自分の中に取り入れるようにしています。そうすることで、役が自然と体に馴染んでいくような気がします。

2026年には舞台にも初挑戦されますね。今、どんな気持ちですか?

「いつかは舞台に挑戦してみたい」とずっと思っていましたが、実際に決まってみるとやっぱり少し怖くて、不安な気持ちも出てきました。舞台はすべての瞬間が“本番”で、全公演が一発勝負。まだ知らない世界だからこそ、どうしても緊張感が先に立ってしまって……。でも、演出家の方とお会いしたときに「そんなに緊張しなくても大丈夫。みんな同じ気持ちだし、もっとリラックスしていいんだよ」と声をかけていただいて。今は、稽古が始まるのがとても楽しみです。

作品を重ねていく中で、演じることについての“転機”はありましたか?

「これが転機だった」といえるような、明確なできごとはないんですが、撮影を終えるたびに演技を振り返っては反省して、次の現場に生かしていく。そういうことを繰り返してきました。ひとつでも気づきがあれば、その分だけ私自身も変化することができる。そうやって一歩ずつ、自分の中の階段を上ってきたような感覚があります。

俳優は、感情を扱う仕事だと思います。さまざまな感情に触れる中で「ここだけはブレない」という心の軸はありますか?

たとえどんなに苦しい感情や、辛い心情を演じるシーンだったとしても、「やっぱりお芝居って楽しい」と思いながら演じることができたらいいなって思っています。その気持ちが、今の私にとっていちばん大切な軸になっている気がします。

當真あみ(とうまあみ)
2006年11月2日生まれ、沖縄県出身。’21年にCMでデビュー。映画『かがみの孤城』で主人公役の声優として注目を集める。NHK大河ドラマ『どうする家康』やTBS日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』など、話題作に次々と出演し、演技の幅を広げてきた。’25年7月よりスタートした日テレ水曜ドラマ『ちはやふるーめぐりー』で連続ドラマ初主演を務め、同年10月公開の『ストロベリームーン』、’26年の舞台『ハムレット』、映画『終点のあの子』と、立て続けに注目作品も控える、今もっとも勢いのある若手俳優のひとり。

Photography_Wakaba Noda( TRON) Styling_Remi Kawasaki(TRON) Hair & Makeup_ SAKURA(makiura office) Text & Edit_Midori Yoshino