岸谷蘭丸さん【思春期のしくじりこそ、人生の宝!】「中受」は極めて優秀な“ベンチマーク”です

幼少時代の難病、中学受験、第一志望の早稲田実業学校中等部に見事合格するも不登校に……。そして、海外の高校を受験、高校・大学での海外留学を経て起業。
弱冠24歳にして、様々な壁やしくじりを乗り越え、チャレンジをしてきた岸谷蘭丸さん。
そんな蘭丸さんに、計り知れない母たちの思春期子育て悩みのあれこれに
ズバッと歯切れよく答えていただく必読のシリーズ。
第一弾は、「中受」をさせる親たちの迷いや戸惑いへの、ANSWERです。

「中受」をさせることは正解!? 日本の学歴社会のレールに乗せている自分が俯瞰で見えて……

遊ぶことも控え、ただひたすら「中受」のための勉強をする小6の息子に対し、
これで良いのかな……と思うこともあります。とはいえ、今の日本だと企業の採用側からしても、
まずは効率的にも結局、学歴で見ているのだと感じます。だから良い大学に行けるように、
と親として思ってしまって。この中学受験の風潮に関し、蘭丸さんはどう感じますか?
(小6息子母/A・Iさん 41歳 主婦)

「中受」をさせることは決して間違っていません。 目標設定が必要な思春期に、「中受」は極めて優れた“ベンチマーク”です

「学歴」は親から子への最高のプレゼント

「学歴」は、親から子どもへのプレゼントだと思うんです。
親は、子どもが社会に出る前にどれだけのものを持たせてあげられるか、
それを考えるのではないでしょうか。
僕が社会に出て感じた、社会人として必要なものは、
”ステータス”と”スキル”、それに”人間力”の3つ。
「学歴」は、その“ステータス”の部分で、一番わかりやすい力を親が与えてあげられる。
3つの中では、一番親が与えやすい力で、塾に行かせて、叱ってでも勉強させれば、
学歴は割と与えやすいと言えますから。
学歴は、いわば競争に参加する挑戦権。
学歴を持ったうえで、学歴が必要のないことをやるのは簡単で、ユーチューバーやミュージシャン、起業家……、
好きなことをやればいい。
そして、ステータス以外の、“スキル”や“人間力”といった部分がめちゃくちゃく秀でていいて、
何かやりたいことがあるなら、そっちを伸ばせばいい。
そういう修正はいくらでも利くけれども、「学歴」は後から修正が利かない。
だから、やっぱり与えられるんだったら、絶対に与えておくべきものだと思います。

15歳までに頑張ることを知らなかったヤツは、一生頑張れないかもしれない

そもそも、思春期は勉強をしなきゃいけない時期。
義務教育って、最低限のベースを伝える教育で、それはインプットする力、
つまり自分の中に知識を入れる力とか入れた知識をアウトプットする力、
論理的に物事を考える力、もしくはちゃんと文字を読んで情報を取得する力と、
生きるためのベースの学力を身に付けること。
それが多分勉強の目的だと思います。例えば、計算ができないとか、漢字が読めない、
現代文が読めないと大問題だし、理科も社会も、ものごとってどうなっているのか、
社会の仕組みはどうなっているのかを知るためのもの。
それを怠って、中学生、15歳までに勉強を頑張れなかったら、
一生そこから覚えられない可能性が高いと思います。
でも、やっぱり6歳から学校に入り15歳までっていうのは長くて、
息切れせずに勉強し続けるのは相当難しい。
だから、目標、ベンチマークが必要なんです。
「中受」はそのベンチマークの一つ。
それが数学オリンピックでもいいし、英検でもいい。
なんでもいいと思うんですよ。
家庭内で、子どもが興味のあるものに対し、「じゃあ、一緒に自由研究やってみよう!」と目標を決めて、
昆虫が好きな子が「アゲハチョウの記憶は遺伝するのか」っていう研究をしてみる、
みたいな興味あることを突き詰めてもいい。
僕は、「中学受験」をさせることには、150%賛成です。
もし、僕に子どもができたら、絶対に中学受験をさせると思う。
なぜ、一番伸びる、知識が身に付く重要な思春期の時期に頑張らせないんだ、と思うから。
特にお子さんが男の子だった場合、これは男として24歳になってリアルに感じますが、
だんだん同年齢の女の子たちが結婚を意識し始めて、彼女たちの多くが「自分より賢い」
「自分より稼いでる」ってことを求めてくるわけですよ。
そりゃ、僕が知るアンケートデータの中には、「自分より稼いでなくてもいい」っていう人も
三割ぐらいはいたけれど、じゃあ、好きな人が出来たり、結婚相手を見つけよう! となったら、
それより多い割合の人が、「自分より稼いでる人がいい」という考えになっている。
好きな人からの要求に応えられるくらいの稼ぎがなきゃいけない、とか思うわけです。
結婚が現実的になるこの年齢になってもやっぱり、
勉強を頑張らせてもらったことには凄く感謝する場面が多いです。

生まれて初めて社会の厳しさを知る「中受」の経験を、子どもはきっと感謝する

そう考えると、やっぱり「中学受験」をすることは、いいことじゃないでしょうか。
「頑張る」ってことを覚えるし、辛い経験や逆境の中で、どうやったら強くなれるか、
どうやったら競争に勝てるかを考える。
辛いから、まあ、考えるわけです。
そして、「絶対にこいつには勝てないな」ってヤツが世の中にいるってことを理解するわけです。
10歳にして社会を知るわけです。
そんなわけで、「中学受験」はベンチマークとしての機能が極めて優れているんです。
15歳までの義務教育というジャーニーの中で、良き目標にすべきです。
だから、中学受験のための勉強をすることは何も間違ってはいません。
そして、絶対に子どもは、感謝すると思います。
事実、僕自身がそうだから。

Ranmaru Kishitani

2001年生まれ。俳優・岸谷五朗さんとミュージシャン・元プリンセス プリンセス岸谷香さんを両親に持つ実業家。トキワ松学園小学校、早稲田実業学校中等部を経て渡米。海外の高校へ進学後、現在はイタリアのボッコーニ大学に在籍しながら、海外トップ大学受験の専門塾「MMBH」や海外大学情報Webメディア「留パス」を設立し、自らも学んだ「Liberty English Academy」と業務提携。動画配信も注目を集める。

撮影/西崎博哉(MOUSTACHE) 取材・構成/河合由樹

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